自分の表現のひとつに芝居を取り入れていきたい

――本作は、リスト作曲「超絶技巧練習曲4番マゼッパ」など、クラシックをじっくり聴かせる映画に仕上がっていましたが、こだわりのポイントがあれば教えてください。

 クラシックを一曲流す作品というのはあまりないので、そこにはこだわりました。あと、ピアニストが参加したことで、音楽がかなり感情移入できる材料になっていると思います。また、コンクール中、ここでは喋らないとか、その現場を体験した人間ならではの意見を言わせてもらいました。

――最後に、今後のピアニストとしての、また俳優としての目標を教えてください。

 ピアニストとしては、引き続き、歌詞のない、世界を限定しないインストの良さを、より多くの人に発信していきたい。そのためには、実際にライヴで聴いてもらいたいんです。今でも、年間140~150カ所回っているんですが、なるべく多くのところを回りたいと思っています。俳優としては原作では続編も出ているので、引き続き、岬洋介役をやらせていただきたいですね。また、ピアノから離れたキャラクターも演じてみたい。そうやって、芝居を自分の表現のひとつに取り入れていきたいんです。

清塚信也(きよづか しんや)
1982年11月13日生まれ。東京都出身。日本人の父、韓国人の母を持ち、5歳よりクラシックピアノの英才教育を受け、セルゲイ・ドレンスキーのほか、中村紘子、加藤伸佳に師事。2000年、第1回ショパン国際コンクール in ASIAなど、国内外のコンクールで数々の賞を受賞。コンサートのほか、CD、書籍なども多数発表。10年にはNHK大河ドラマ龍馬伝「龍馬伝紀行」のテーマ曲演奏を担当した。本作が本格的な俳優デビューとなる。

『さよならドビュッシー』
家族と幸せに暮らしていたが、火事に遭い一人だけ生き残った遥(橋本愛)。全身にやけどを負い、心に傷を抱えた遥だったが、ピアニストの夢を諦めず、コンクールを目指し、ピアニストの岬(清塚信也)と練習を再開する。だが、周囲で不可解な現象が起こり始める。
good-bye-debussy.com
(C) 2013 さよならドビュッシー製作委員会
1月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2013.01.18(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Asami Enomoto