初めて壁にぶつかった、ドラマ「アスコーマーチ」
――当時、古川さんとお会いしているんですが、新人離れした堂々とした態度で驚いたことを覚えています。
それが僕のいいところであって、悪いところなんですけど、何も分からないからこそ、まったく緊張しないんですよ。当時は先輩の役者さんと演技をしていても、あまり意識しなかったですね。たとえば長回しのシーンの最後に、僕が一言だけ言う場合、絶対にトチっちゃいけないんですが、そういうことさえ分かっていなかった。その後、主演させていただいた『men's egg Drummers』(2011)のときも、監督から「古川くん、あんまり緊張しないよね」とよく言われました。
――帰国子女ということもあって、小さい頃から度胸があったんですか?
いや、じつは人前に出るのは苦手なタイプなんですよ(笑)。高校からダンスを始めて、大学ではサークルの代表もやっていたので、そういう意味では人前に出るのは慣れているんですが、今でもフリーな状態で人前に出るのは結構ダメなんです。ダンスや演技って、振付やセリフのような決まり事があるじゃないですか。それは練習すればなんとかなると思うんですけど、何も用意できないと大変です。
――その後、俳優としてターニングポイントになった作品があれば、教えてください。
最初に壁に当たったのは、去年やらせてもらったドラマ「アスコーマーチ~明日香工業高校物語~」です。学園ドラマで生徒の一人を演じるというのは挑戦でした。大勢いる中で埋没しないためにはどうするか、と。それに、ドラマの出演自体初めてでしたし、ヤンキー役。僕は演技レッスンをちゃんと受けたことがないので、当時、他の作品では「自分だったら、こうするんだろうな」というアプローチで演じていたんです。でも、ヤンキーという自分とかけ離れた役柄に関しては、そのやり方ではまったく歯が立たないということに気付いた。そこから、ほかの作品をたくさん見るようになりましたし、同世代の先輩たちからいろいろ聞いたり、演技について真剣に勉強するようになりましたね。
2012.12.07(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Miki Fukano