自分以外の何者かではなく
ありのままの自分へと変身
「経理部のAI」と言われるほど有能だけれど、社内ではいつも眼鏡にひっつめ髪で猫背、超地味な独身アラフォー女子の田中さん。「リスクヘッジがしたい」と婚活合コンに励む23歳の派遣OL・朱里(あかり)は、恋愛や結婚から降りているように見える田中さんの、裏の顔を偶然知ってしまう。彼女は、ベリーダンスを踊る超絶グラマラスダンサーだった。「恥ずかしい」から「誰にも言わないで!!」。でも……だったら何故踊る? 探究心に火がついて、朱里は田中さんの変身の理由を知る。
田中さんは、自分以外の何者かに変身したいわけではなかった。ただ、両親が褒めてくれた長い手足、女性としての自分の体に対して「胸を張ろうと思ったの」。彼女の変身は、社会の同調圧力で心身を縮こめることのない、ありのままの自分への変身だったのだ。何より美しいのは、この物語は、変身する田中さんを見ることによって、周囲の人々もまた変身するということ。
『セクシー田中さん』 (既刊1巻)
田中さんの変身を目の当たりにした朱里は、「今まで言えなかったことが言えるようになった」。年齢も人生観も掛け離れた2人の女性の友情モノとしても魅力的。次なる変身の候補は、女性を勝手にカテゴライズする毒舌サラリーマン・笙野!? 『姉系プチコミック』連載中。
芦原妃名子 小学館 429円
Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2018.08.19(日)
文=吉田大助