今月のテーマ「大団円」
【MAN】
驚天動地のトリックが発動する
本格SFにして本格ミステリー
西暦2063年、カナタやアリエスら高校生たち9名は、惑星キャンプに出かけた。しかし、謎の球体に吞み込まれ、全員が宇宙空間へワープ。偶然見つけた無人船アストラ号に乗り込み、故郷の星を目指すサバイバルの旅を始める──。
食糧や燃料補給のために立ち寄る星の数々は、独自の生態系や法則が存在する。『銀河鉄道999』方式で、星々での冒険を描くタイプの物語と思いきや、本格SFである本作は、本格ミステリーでもある。
第4巻のラストで図地反転の大仕掛けが発動。続く最終巻の第5巻では、それまで描かれていた物語はすべて伏線だったことが明かされる。だが、すべての謎が解かれるだけで、大団円と言えるのか? 違う、ぜんぜん足りない、と『週刊少年ジャンプ』出身のマンガ家は自らの筆で示す。
謎が解かれ霧が晴れた少年少女たちの未来を全員分、作者はとことん描き尽くしたのだ。これぞ王道、これぞエンターテインメント!
『彼方のアストラ』(全5巻) 篠原健太
5千光年先の遠宇宙で遭難した少年少女9名が、アストラ号に乗って故郷の惑星を目指す。サバイバルのためには、水と食糧が採取できる惑星を経由する必要がある。計算上はその数、5つ! ストーリーはもちろん、どシリアスな展開でも入れ込んでくるギャグの切れ味も最高。
集英社 438~490円
2018.03.27(火)
文=吉田大助