今月のテーマ「お隣さん」

【MAN】
性別も異なり年齢も掛け離れた
2人の掛け替えのない関係

 大家さんは、「ごきげんよう」と挨拶する上品な物腰の80代のおばあちゃん。

 新宿区のはずれに建つその一軒家は、1階は大家さんが一人暮らしをし、2階は貸し出されていた。店子となった「僕」は、「ひとつ屋根の下」で大家さんとの不思議な共同生活をスタートさせる。

 帰宅して部屋の電気をつけると携帯に電話がかかってきて、「おかえりなさい」。家賃を手渡しする時は大家さんの部屋でお茶をし、時間が合えば伊勢丹へ繰り出し一緒にランチ。初めは距離の近さに戸惑っていたものの、お笑い芸人を生業とする「僕」はたぶん、ドヤ感ゼロで放たれる大家さんの天然ギャグに魅了されてしまったのだ。例えば、戦争記念館の特攻隊員の写真を前に一言、「涙が止まらない ドライアイで出てこないけれど」。

 他にも理由はあるものの、面白いから、何を言い出すか分からないから、そばにいたい。人が人と共にいる、一番純粋な気持ちがここに。

『大家さんと僕』(全1巻) 矢部太郎

80代のおばあちゃんと、アラフォーお笑い芸人の「僕」。「親と子」ではなく「大家と店子」の2人は、旅行へ出かけるほどの仲になる。出張中に、大家さんが倒れたとの一報が入って……。著者はお笑いコンビ「カラテカ」のボケ担当。本作が、初めて描いたマンガ作品。
新潮社 1,000円

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2018.01.05(金)
文=吉田大助

CREA 2018年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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