今月のテーマ「イケナイこと」
【MAN】
エロ耽美なシチュエーションに
ドキドキ必至、6つの短篇集
仕掛ける側と受け入れる側、そのどちらにいても、こんなことが我が身に起きたら一生忘れない甘酸っぱい思い出になるだろうなと思う。
恋に破れて湖に身を投げようとしていた女性は、渡り鳥の観察に来ていた少年を、〈わたし あなたのペニスが見たいんだけど〉と甘い言葉でからかう(「オフィーリア」)。
太宰治の小説について語り合う道すがら、黒髪の少女・亞以子は、ハーフアップの少女・英子に、「斜陽」のお母さまのように野原で放尿してみせて、とそそのかす(「葦原」)。
表題作では、男子高校生のトモが、幼なじみの男の子アサの局部を、体操着の横から見てしまったのがコトの発端。トモは思いがけず意識してしまい、アサに男に触られたときに勃たずにいられるかの賭けを申し出る。
各篇の登場人物はみな、インモラルなシチュエーションに冗談の体を装うが、内心では複雑な興奮や恥じらいにドギマギ。
『岸虎次郎作品集 冗談だよ、バカだな』(全1巻) 岸 虎次郎
表題作の主役は、サッカー部のイケメン・トモと女の子より可愛いアサの、仲良し男子高生。その他、大人の女性と少年、男性高校教師と女子高生、女子高生の2人組、双子の少女……1対1のアヤシい一瞬を、代わる代わる描く。各篇に漂う“寸止め感”が、妙にエロティック。
太田出版 680円
2017.10.06(金)
文=三浦天紗子