今月のテーマ「美術館」
【MAN】
すべてのコマの完成度にうなる
神業のような美術品
ルーヴル美術館の屋根裏に住む猫たちは、〈まだここが、城と呼ばれていた頃からの居住者〉。だが、いまや彼らのささやかな自由といえば、人間の目をかいくぐり、月夜に敷地内のあちこちを散歩することくらいだ。生き延びるために猫たちは、人間との接触を極力避け、ひっそりと暮らす。そんな猫社会の掟からはみ出す〈ゆきのこ〉は、成長が止まったかのようにいつまでも儚げな白い子猫で、絵をめぐる不思議な力を持つ。ゆきのこやボス猫のアオヒゲ、元飼い猫のノコギリなど、ルーヴルの猫たちの味方をしてくれているのが、曾祖父の時代から代々この美術館で働いてきた老人マルセルや、警備員のパトリック、ベテランガイドのセシル。
ある日マルセルはセシルに、幼いころに消えた姉・アリエッタの秘密を打ち明ける。彼女もまた絵をめぐる特殊な力を有していたことを……。人と猫、生き物たちとの交流や不思議な縁から見える、命の耀きの物語。
『ルーヴルの猫』(上下巻) 松本大洋
2016~17年に日本各地で開催された、ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」。選ばれし16人のひとりとして、参加した著者が、本作を出品。荘厳で美しい美術館の内部や展示品。幻想的な風景。猫の愛らしさ。人間の優しさ。本書もまた美術品のよう。
小学館 各1,296円
2018.02.19(月)
文=三浦天紗子