美しい自然が培養する
天才的な“数学の美的感性”
数学界のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞受賞数学者の小平邦彦は、数学は高度に感覚的な学問であり、数学者は〈数覚〉という五感以外の感覚で目の前の現象を見るのだと述べた。南インドの魔術師との異名を取る数学者ラマヌジャンは、自分が発見した傑出した数学の公式を「自然に浮かんだ」「女神が教えてくれた」などと言うらしい。老数学者の内田豊がいち早く見抜いたのも、小5のハジメのそんな独自のひらめき力だ。
内田はハジメの数学的才能に惚れ込み、京都に引き取る。そこでは、数学の天才児・手嶋ナナオがすでにその名を轟かせていて……。
ハジメとナナオの天才性はまったく違う質のものだ。数学検定1級の最年少記録保持者のナナオ。異なる数学の領域は実はひとつながりなのではないかという数学ビジョン〈ラングランズ・プログラム〉に通じる世界を見ているかもしれないハジメ。高め合うふたりは美しい。
『はじめアルゴリズム』 (既刊3巻)
講演会のために故郷に戻った内田は、中学時代の自分が壁に書いた世に出なかった数式たちが完成していることに気づいて仰天。それをやってのけたのが関口ハジメと知り、彼への指導を始める。1歳違いのライバル、ナナオとの出会い。初めてのスランプ。ハジメの才能は花開くのか。
三原和人 講談社 570円
2018.06.30(土)
文=三浦天紗子