熱海に来た甲斐を感じる焼き肉
さて、ここは焼き肉屋さん。お肉ももちろんおいしかった。今でこそポピュラーな「ザブトン」を抜き出して初めて商品化したのは、ここ「秘苑」らしい。でも実は、ザブトンからさらに「マクラ」を抜き出しちゃっているのでさらに選りすぐりとなっている。塩がふられたザブトンは、静岡県のおろしたて本わさびや地元の橙でつくるポン酢でさっぱりといただこう。地元の味を生かした味付けで食べれば、トリップ感も増すというものだ。
また、自家製の白菜キムチもおすすめ。温泉水を使って仕込んでいて、結構浅漬けっぽい。白菜がパリッとしていて、サラダのようにシャキシャキ、もりもりと食べられた。辛いタレが濃厚に絡まっているイメージのキムチとは違って、もっとちゃんとお漬け物。化学調味料も使っていない。
話をふわふわ玉子に戻そう。同席していた紳士が、「この『ふわふわ玉子の石焼きビビンバ』 はモン・サン・ミッシェルを思い出させるなぁ!」とダンディーなことを言い出した。しかし、そのモン・サン・ミッシェル版ふわふわ玉子は東京ですでに食べることができるのを私は知っている。そして、私が翌日のランチにそのお店を予約していたのは数奇な運命としかいいようがない。
翌日、ふわふわ玉子に魅せられっぱなしの私は某モン・サン・ミッシェルへ。確かに写真を見るかぎり「ふわふわ玉子」部分はよく似ているし、「秘苑」のにはかかっていた(実は少々苦手な)マヨネーズがこちらにはかかっていない。厨房から聞こえてくるカッカッカッカッ音も同じだ。恋に落ちる準備は十分にできていた……。
しかし! ひと口食べてみてびっくり! 「私が愛するふわふわ玉子は熱海にしかないわ」。近場のふわふわ玉子(しかもモン・サン・ミッシェル)で自分の気持ちをごまかすことはできないのだ。ああ、なんという悲恋(ええ、「秘苑」とかけています!)。私は愛するふわふわ玉子のためにまた一路熱海へ足を運ぼう。
Column
北條芽以のLOVEレストラン
美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!
2012.03.22(木)