LOVE : ふわふわ玉子のビビンバ
お肉ももちろんおいしい焼き肉屋さん

焼肉レストラン 秘苑|熱海

 日帰りで熱海に出掛けたのは2月のことだった。あたみ桜が少しほころびていたが、地元の人は「今年は遅いねぇ」と言っている。まだ少ししか咲いていないけれど、川面にふくらんだつぼみがせり出す光景は目黒川の桜並木をコンパクトにしたようでなかなかかわいらしい。

 熱海はいろんなエライ人がちょっとした旅行で訪れたことから発展した街だという。かつては新婚旅行のメッカだったわけだけれど、同じようにお忍びの人も多かった(らしい。証言by洋食屋さんのご主人)。

 そんなお忍びカップルにもぴったりな密やかな店名を持つのが「焼肉レストラン 秘苑」である。あたみ桜も美しいせせらぎの近く、でも路地の詰まったところにあり、なかなかの「秘苑」っぷりだ。密やかムードゼロながら入ったココで私はいきなり恋に落ちる。「ふわふわ玉子の石焼きビビンバ」に。ふわふわ玉子というからにはふわふわしているであろうことは察していたが、そのふわふわぶりは想像をはるかに上回っていた。

店主が雷に打たれたようにレシピを思いついた、という「ふわふわ玉子の石焼きビビンバ」。お肉をたくさん食べたあとに優し~いビビンバで癒されたい。少量のマヨネーズとパプリカがかかっている。「恋は突然やってくる」というわけで写真が油断していてごめんなさい

 ビビンバを入れるあのアツアツの器に黄色い玉子がこんもりと。ぐりとぐらがつくったカステラも真っ青のこんもりぶりである。ふわふわはあわあわでもある。店主が厨房でカッカッカッカッと小気味いい音を立てながら泡立てていたのはこれだったのだ(気づいてたけど)。なんて愛くるしいんでしょうか。

 人数分に分けようと玉子のこんもりにスプーンを入れると、もうメニューの名前の通りにふわふわふわ~っと沈んでいく。しかし生っぽいわけではなく、スフレのようにちゃんと火が通っている。玉子の下はビビンバだ。煮たわらびなんかが入った非常にシンプルなビビンバ。いつも上にいろいろのっているものがのっていない、素ビビンバだ。これだけでもおいしそう。

 そして、ごはんはちょっぴり甘くてふわふわ玉子にぴったりすぎる。特に香ばしいおこげの部分なんて……。シンプル&絶妙なビビンバをふわふわ玉子が包み込み、まるで太陽をたっぷり浴びたお布団にくるまっているみたい。玉子も優しく、甘く。なんだろう、ふわふわ茶巾寿司?

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2012.03.22(木)