若手実力派シェフのビールペアリングディナー

レストラン・アンデル・ドゥ・トレンは、緑に囲まれたかわいい一軒家レストランだ。

 5日間の取材で試飲したビールは、約51種類に上った! でも、これはベルギー国内で造られている1700種類を超えるビールのうちのごく一部に過ぎない。ビール取材最終日の夕食はもちろんビールペアリングディナーだ。

ドアの外で出迎えてくださった、シェフのサム・ファン・ホウケさん。後に見えているのは、2014年から選ばれているヨーロッパの若手レストラン(2016年現在320軒)の証し。

 一軒家のレストラン・アンデル・ドゥ・トレンは、ゲントとブルージュの間にある。

 シェフのサム・ファン・ホウケさんは、ブルージュのホテル学校を卒業後、ベルギー国内のミシュラン星付きレストランなどで腕を磨いた。独立したのは2006年のこと。2012年には、ベルギーのベスト魚料理シェフに選ばれた実力派だ。

 まずはウェイティングルームで、セント・ベルナルデュス醸造所の白ビール、セント・ベルナルデュス・ウィットに、ジンとレモン、バーベナを加えたビールカクテル。爽やかな酸味が加わって食前にぴったりだ。

左:メインダイニングは柔らかな照明で居心地がいい。
右:まずはビールカクテルとアミューズから。

 その間にシェフのサムさんは、アシスタントシェフとともに次々と料理を盛りつけていく。

アシスタントシェフとともに手際よく料理を盛りつけていくシェフのサムさん(右)。

 テーブルに移動してからはビールペアリングディナーの始まりだ。各醸造所の要望でサービスされたビールの種類は料理の2倍。つまり、ひとつの料理に2種類のビールというペアリングなのだ!(笑)

左:メインディッシュのヤマウズラのソテー、カボチャとシイタケ、サツマイモ添え。ビールは、ヘット・アンケル醸造所のグーテン・カロルス・クラシック(左)と、ドゥ・ハルヴ・マーン醸造所のストラッフェ・ヘンドリック・ヘリテイジ。
右:デザートの抹茶のアイスクリーム、ラズベリーとブラックベリー添え。こちらに合わせるのも、コーヒーでもデザートワインでもなく、ベルギービール! リンデマンズ醸造所のリンデマンズ・フランボワーズと、ルフェーブル醸造所のバーバー・ブロンド。

 「ビールは単なる飲み物じゃないの。その瞬間を楽しくシェアして人と人を繋ぐための大切な役割を果たしているわ」とは、テーブルに同席してくれたデ・ライク醸造所のミーク・デ・ライクさん。彼女の言ったとおり、最後の食事はビール談議で盛り上がり、とても楽しい時間となった。

 帰りの機内で、ビールをお願いしたらオランダの「ハイネケン」だった。それまでは、発泡酒でも充分と思っていた味覚の持ち主が、「ハイネケンってこんなに薄かったかしら?」と思ってしまったことに驚いた。それほど、ベルギービールは深い味わいのビールなのだと認識した旅だった。

Restaurant Onder De Toren(レストラン・アンデル・ドゥ・トレン)
所在地 Hansbekedorp 24, 9850 Hansbeke, Belgium
電話番号 09-233-0009
http://www.resto-onderdetoren.be/en/home

2016.09.12(月)
文・撮影=たかせ藍沙