ベルギーの代名詞といえば、ビール。九州よりも小さいというこの国では、数々の醸造所が、競うように個性にあふれたビールを世に送り出しています。この短期集中連載では、ブリュッセル、アントワープ、ブルージュなど、ベルギーの各地をトラベルライターのたかせ藍沙さんが旅し、ビールに酔いしれるとともに街の魅力をレポート。

 第1回は、小便小僧でも知られる首都ブリュッセルを訪れます。

小便小僧の目の前で事件が起こった!

グラン・プラスのギルドハウス。それぞれ、小間物商、船頭、射手、油商、ベーカリーなどのギルドの建物。広場中央では植木市が開かれていた。

 実は、取材に出かけるかどうか、少しだけ迷った。「ベルギービール」が取材のメインテーマだったから。ベルギービールって、いろんな物が混ざっていて甘ったるかったり、クセがあったりする、あれでしょ? 今まで、美味しいと思ったことがなかったもの。

 でも、よく考えたら、今までベルギービールを飲んだことって、片手で足りるくらいしかなかった。ベルギービールを置いている飲食店も多くはないし、食料品店などで見かけても、敢えて買おうとは思わなかった。口に合わないかも知れないビールが割高だったからだ。

 でも、もしかしたら、私が知らないだけでベルギービールは美味しいかも知れない。小さな国に醸造所が約160軒もあって、1500種類以上のビールがあるというのだから。そう思ったらむくむくと好奇心が湧いてきて、ベルギー行きを決めた。

ブリュッセル旧市街の街並みは眺めているだけで楽しい。

 ベルギーは、九州よりもひとまわり小さな国。首都のブリュッセルは、歩いて回れてしまうくらい、こぢんまりとした街だ。さっそく散策することにした。

ギルドハウスの形をしたチョコレートのパッケージ。

 まずは、グラン・プラスへ。ここは、旧市街の中心にある大広場で、約110×70メートルの広場が、ギルドハウスに囲まれている。ギルドハウスというのは、中世・近世ヨーロッパの商工業者の組合「ギルド」が使っていた建物のこと。グラン・プラスのギルドハウスは300年以上前に建てられたもの。凝った装飾が美しい。

 ここで、2年に1度、8月に「花のじゅうたん」が催される。2016年のテーマは、国交樹立150周年の「日本」だ。

小便小僧の前には人だかりが、でも何かおかしい?

 そこから細い道を抜けて、目指すは、かの「小便小僧」。ブリュッセルに来たからには見ておかなくては、と思ったのだった。土産物店やチョコレート店などが軒を連ねる細い路地を抜けて歩いていると、人だかりが見えた。「これね、有名な小便小僧は」と思って写真を撮っていたら、どうも様子が違う。

 よく見ると、その先にもうひとつ小便小僧が。「えっ? どういうこと?」と思っていると、手前の小便小僧の横にいた立派なお髭のオジサマが、「もっと近くに来たほうがよく見えるよ」などと言って観光客を誘う。そして小便小僧の近くに人が来た途端、小便小僧の●●から、ピューッと水が飛び出した。

左:あれれ、小便小僧がふたり??
右:立派なお髭のオジサマを見つけたら要注意! 左手に握られているのは水を噴射するスイッチ!(笑)

 その水を浴びて、「キャー!」と驚きながらも大笑いする観光客、そして素知らぬ顔のオジサマ。彼の手にはしっかりスイッチが握られていた!(笑)。翌日にはいなかったので、不定期で出没するらしい。このお髭を見かけたら要注意!

左:こちらが本物の小便小僧。彼には世界中から服が送られてくるのだとか。翌日はなぜかヌードだったけれど(汗)。
右:グラン・プラスから、小便小僧とは反対側にあるショッピングアーケード「ギャルリー・サン・チュベール」。ここでもビールを楽しんでいる皆さんが!

 街歩きを楽しんでホテルに戻る途中、昼間だというのにビールを飲んでいる皆さんが。ベルギーでは、このようなお店は、「バー」や「パブ」ではなく、「ビアカフェ」という名で親しまれている。アルコールを飲むというよりも、カフェに立ち寄るくらいの軽い感覚らしい。「噂通りのビールの国なのね」と、ビール取材がますます楽しみになってきた。

ホテルまでの帰り道、かわいいネコのオブジェが目を惹くビアカフェもにぎわっていた。

2016.02.23(火)
文・撮影=たかせ藍沙