ビアカフェで醸造家からレクチャーを受ける
夕食は、ブリュッセルでもっとも古いビアカフェのひとつ、「ラ・フルール・アン・パピエ・ドレ」へ。20世紀初頭は、ルネ・マグリット、ルイ・スキュトネール、マルセル・マリエンなど、シュールレアリズムの画家たちが集ったことでも知られているという。
建物の外観は、オフホワイトの壁に木の枝のオブジェが飾られていてすっきりとした感じだが、中に入ると雰囲気がまるで違う。歴史のあるビアカフェとは聞いていたけれど、聞きしに勝る年代物の香り!
アンティークのようなシャンデリア、イスもテーブルも年代物だ。数十年も変わらずにそこにあるのであろう、壁を覆う絵や詩の額たち。そして壁も絵も、タバコのせいか茶色く変色していた。手前の部屋を入ると、その奥にカウンターがあるもうひとつの部屋が。
私たちが通されたのは、その更に奥にある部屋だ。そこは増築したのか、隣の家をドッキングしたのか、東京にでもありそうな雰囲気。そのまた先には小さな中庭があり、そこにもテーブル席があった。まるで迷路のよう。このお店では、ビールを使った料理と、料理に使われているビールを同時に楽しむことができる。
右:こちら、フィリップさんが造った「オピュス」。アルコール度8.3%で、コクがあってずっしり来るビールだ。スモークサーモンのソースに使われていた。
取材ということで、醸造家の方たちがいらしてくださった。最初に、「ブラッセリー・ルフェーブル」のフィリップ・ルフェーブルさんからビールの注ぎ方、飲み方のご教示。
「ビールは最後まで注いじゃいけないんだ。瓶の底には酵母が溜まっているから別のグラスでね」と言って、最後の部分だけをテキーラグラスのような小さなグラスに注いだ。「まずは、ビールを飲む」と言って、彼は実際に一口飲んでから話を続けた。「それから、小さなグラスの酵母を飲んでもいいし、ビールに混ぜてコクを出してもいいんだよ」と。
「知らなかった!」それは、瓶の中で酵母が生きている証拠だった。真似して飲んでみると、それぞれのグラスの中身はまったく味が違う!
右:チョコレートムースは、この日、駆けつけてくださったもうおひとり、「デュブイソン醸造所」のマーク・レマイさんが造ったビール、ブッシュ・デ・ニュイが使われている。夜の茂みという名の黒ビール系。強くてナッツやキャラメルのアロマとフルーティなワインのような余韻があり、チョコレートによく合う。
それから食事が始まった。ビールビネガーをかけたスモークサーモン、ビールで煮込んだビーフシチュー、デザートのチョコレートムースにもビールが使われていた。合わせるのは、それぞれの料理に使われているものと同じビール。完璧なるビールペアリング。合わないわけがない!
酵母で消化が促進されているのか、食も進むし、会話も弾む。ベルギーでは、ビールは単なる飲み物というだけではなく、コミュニケーションのツールとも言われている。もちろん日本でもそうだけれど、ビールが日本よりも身近なベルギーでは、日本よりもはるかに多くのコミュニケーションと絆を支えているのだとしみじみ。
私たちが店を出る頃には、入り口近くの2部屋はほぼ満席。ベルギーの夜はまだまだ終わらないのだった。
ホテルに帰る途中、グラン・プラス広場の夜景を見に行った。夕食後だというのにもの凄い人出。なぜなら、ライトアップが素晴らしく美しいのだ! 広場の周りの路地にはイスとテーブルが所狭しと並べられていて、誰もが笑顔でビールを片手におしゃべりしていた。滞在初日にしてベルギーの皆さんの温かさを感じた1日だった。
La Fleur en Papier Doré(ラ・フルール・アン・パピエ・ドレ)
所在地 Cellebroersstraat 55 Rue des Alexiens, 1000 Brussels, Belgium
電話番号 02-511-1659
URL http://www.lafleurenpapierdore.be
Brasserie Lefebvre(ブラッスリー・ルフェーブル)
URL http://www.brasserielefebvre.be/
Brewery Dubuisson(デュブイソン醸造所)
URL http://www.dubuisson.com/
【取材協力】
ベルギー・フランダース政府観光局
URL http://www.hollandflanders.jp/
Belgian Family Brewers(ベルギー・ファミリー・ブリュワーズ)
URL http://belgianfamilybrewers.be/
KLMオランダ航空
URL http://klm.co.jp/
ベルギービールを堪能する旅へ
2016.02.23(火)
文・撮影=たかせ藍沙
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