ベルギーの代名詞といえば、ビール。九州よりも小さいというこの国では、数々の醸造所が、競うように個性にあふれたビールを世に送り出しています。この短期集中連載では、ブリュッセル、アントワープ、ブルージュなど、ベルギーの各地をトラベルライターのたかせ藍沙さんが旅し、ビールに酔いしれるとともに街の魅力をレポート。

 第4回は、ホップの名産地ポペリンゲを訪れます。

まずはホップ博物館でお勉強

グリーンの扉は、大きな麻袋に入れたホップを、建物の外から中へ吊り上げるのに使われていた。

 ベルギーの西の端に位置するポペリンゲの町とその近郊は、ビールに欠かせない原料のひとつ、ホップの産地として知られる地域。

 ホップは、ビールに香りや苦みを加え、腐敗を防ぎ、泡持ちをよくする役割を果たしている。つまり、ビールに無くてはならない原料なのだ。近隣にある20軒の農家が生産しているホップは、上質で香りが豊かなのが特徴だという。

 最初に訪ねたのは、「ホップ博物館」。建物自体は1860年に建設され、1960年まではホップの倉庫として使われていたもの。各階の外壁にあるグリーンに塗られた扉は、ホップを下から上に運び入れる際に使われていたという。

建物の最上階には、ホップを引き上げるために使われた滑車が残されていて、ホップを入れた大きな麻袋も展示されていた。
ホップ農家の作業は、季節ごとに、道具や写真の展示とともに解説されている。

 館内では、ビデオや模型を使ったホップ生産の解説や、古い工具類の展示のほか、品種によるホップの違いなどを知ることができるほか、1階には1700種類ものビールが展示されている。

 なかでも、ここでしか見ることができないのが、ホップのオス。ホップにはオスとメスがあり、ビールに使われる実をつけるのはメスのほうで、ホップ畑で育てられているのもメスだけなのだ。

左:左がメス、そして右がここでしか見ることができないオス。乾燥させて展示されていた。
右:こちらが、雄花。このように育つことを許されることはない、切ない運命のオスだ。

 雄花の花粉を雌花が受粉してしまうと、種ができてしまい、味が落ちるとともに、油分を含むため、ビール特有の泡が立たなくなってしまう。このため、ホップ農家は、オスのホップを見つけると、即座に伐採するのだ。そして、ホップ畑には未受粉の、オスに出会ったことがないメスだけがすくすくと育っていくことになる。何だか切なくなってしまった(笑)。

左:生のホップの蔓を見せてくれた!
右:ホップの実を潰すと、ビール特有のアロマが香る。

 見学の途中には、実をつけたホップの蔓も見せてくれた。指で潰すとなんともいい香りが漂った! 「あー、これ、確かにビールにこの香り入ってる!」と、初めて手に取ったホップに、早くも感動したのだった。

左:吹き抜けになったホールには休憩用のイスとともに、何やら壁一面にズラリと並んでいる。
右:近くで見ると、なんと、約1700種類ものビールが地方ごとに展示されていた!

Hop Museum(ホップ博物館)
所在地 Gasthuisstraat 71, B-8970 Poperinge, Belgium
電話番号 057-33-7922
URL http://hopmuseum.be/en

2016.07.26(火)
文・撮影=たかせ藍沙