ビールランチに中世の貴族が乱入!?

赤レンガ造りで大きな屋根が特徴のロマン醸造所。

 次に訪ねたのはロマン醸造所。1545年創業で、500年近い歴史を誇る。家族経営の醸造所としてはベルギーでもっとも古く、その歴史はロマン家先祖代々の家系図に残されている。

14代目当主の兄、カルロ・ロマンさん(左)と、弟のローデ・ロマンさん。彼らは伝統を守りつつも、新しい試みに挑戦するアイデアマンでもある。

 現在の当主は14代目にあたる、カルロ・ロマンさんとローデ・ロマンさんの兄弟。さっそく醸造所内を案内してもらった。まずは、博物館のような、古い機器が展示された部屋へ。数百年前のビール造りに使われた機器や家系図を見せてもらいながら、2種類のビールをテイスティング。

館内には数百年前の古い醸造機器が展示されていて、誰でも見学することができる。

 醸造所を代表するブランド、エナムの5種類のうちのひとつエナム・パーテルと、フルーティでホッピーな香りのゲンツェ・ストロップだ。

「o」の字の中に、首にロープを巻いた男性が描かれているゲンツェ・ストロップ。

 ゲンツェ・ストロップのラベルには、首にロープを巻いた男性が描かれている。

 イラストの由来は、ゲント生まれの神聖ローマ皇帝カルロス5世が1540年に行った暴政。ゲントの人々が戦争税の追加納付を拒んだため、カルロス5世は、首謀者を絞首刑にし、その他の意に従わなかった市民の首に絞首台を暗示させるロープを巻き、見せしめのために街中を引き回した。

 今でも、首にロープを巻くということは暴政や権威のはき違えへの抵抗の象徴とされている。謙虚であれという戒めと、市民たちの誇りを表しているのだという。

 ロマン醸造所があるアウデナールドは、もともとブラウンビールで知られるエリア。かつてはロマン醸造所もブラウンビールを造り続けていた。1945年以降は、新しい技術を使うなどしながら様々な試みを重ね、1980年代にはいくつかの種類、色のビールを造り、数多くの賞も受賞している。現在では約20カ国に輸出しているのだという。

約20カ国に輸出されているというビールの発酵用タンクがズラリと並ぶ。上面の小さな覗き窓からは、発酵によってプクプクと泡が出ている様子を見ることができる。

 ほどよく(笑)アルコールが入ったところで、醸造所内を案内していただいた。ここはベルギー・ファミリー・ブリュワーズの中では規模が大きい。発酵タンクがズラリと並んだ光景は圧巻だ。上面の小さなガラス窓からプクプクと発酵している泡が見えた。

 見学の後は、別の建物にあるビアカフェへ移動して、ビールペアリングランチをいただくことに。まずは、各自自分の飲むビールを注ぐところから。最初にグラスを洗い、サーバーから勢いよくビールを注いで泡をあふれさせる。盛り上がった泡は専用のナイフで表面をカット。表面はフラットにさせるのがベルギー流だ。

左:ビールペアリングランチをいただいているときに、突如現れた聖アーノルド!
右:デザートはラベルに聖アーノルドが描かれたブラウンビールのアドリアン・ブラウワー。1605年から造られているという歴史あるビールだ。チョコレートケーキによく合う。

 食事が終わりかけたところで、ランチ会場に怪しい人影が! まるで中世からタイムスリップしてきたかのような男性が、唐突に劇場口調でビールの歴史を語り始めた。なんと、ロマン醸造所のビール、アドリアン・ブラウワーのラベルにもなっているビールの神様、聖アーノルドだ!

 14世紀後半、病気が蔓延して人々が苦しんでいた。修道院でビールが造られるようになり、水よりも安全な飲み物として人々の命を救ったのだという。そんなベルギービール発祥の歴史を、中世の装束で語ってくれた。最後は記念撮影にも応じてくれるというサービスぶり(笑)。楽しいランチとなったのだった。

Brewery Roman(ロマン醸造所)
所在地 Hauwaart 105, 9700 Oudenaarde, Belgium
電話番号 055-45-5401
http://www.roman.be/

2016.09.12(月)
文・撮影=たかせ藍沙