外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない……体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。


 三日間ほど、仕事で東北を旅した。青森県から始まって岩手県、宮城県と太平洋を左手に見つつ、南下していく車の旅。各県とも日中はまだ半袖が気持ちいい陽気で、お天気にもめぐまれ楽しい旅だったが、やっぱり出先ではなかなか野菜が思うように摂れないもの。ばたばたと旅から帰って、栄養の辻褄合わせでもするかと思ったら自然と、食器棚の奥にしまっていた鍋に手が伸びたのだった。さあ、今季初のお鍋である。

 鍋といえば寄せ鍋が代表するように「具だくさん」をイメージする人が多いけれど、私が日常的によくやるのは「三品鍋」だ。あえて「具は三品」と決めてしまう、これが手軽かつ気楽でいい。構成要素は

・緑黄色野菜
・その日の手頃な肉か魚介
・大豆食品

 という3構成を基本としている。

 「小松菜×鶏むね肉×豆腐」の日もあれば、「水菜×豚こま肉×油揚げ」の日もある。「鶏むね肉×豆腐」だと全体が白っぽくて寂しいので、そのときはチゲにして、汁を赤っぽくするとおいしそうな感じになっていい。

 「ほうれん草×ウィンナー or ベーコン×厚揚げ」なんて組み合わせで、洋風コンソメ味も意外といいものだし、中華風に鶏がらスープでごま油を香らせ、「ちんげん菜×豚スペアリブ肉×焼き豆腐」なんて組み合わせもおいしい。このときはもう1品加えて、春雨もたっぷり入れるとなおうまい。

 今回作ったのは、「にらどっさり×豚ひき肉×豆腐」の「なんちゃって麻婆豆腐鍋」である。鍋にひと口大に切った豆腐(絹ごしでも、木綿でも)と豚ひき肉を入れて、水、味噌、醤油、酒、みりんとケチャップを少々、オイスターソースちょいを加え、中火で煮込んでいく。

 

 「そんなんでいいの!?」と思われるかもだが、思いつきでやってみたらなかなかおいしくて、自分でも驚いた。

 沸いたら火を弱めて6~7分ほど煮て味見、塩気が強かったら酒か水を加え、物足りなければ醤油か塩を加える。刻んだにらをたっぷり加えてひと煮して、最後にラー油(できれば花椒入りのもの)を好きな量かける。1人前で、にらは半束ぐらい入れてもいい。すりごまを足したり、黒酢で味変したりするのもおすすめ。白ごはんに合うんだな、これが。もっと寒くなってきたら、おろししょうがを加えるのもいい。

 手間をかけて作る麻婆豆腐もいいけれど、たまにはこんな雑でラクな作り方の麻婆“風”鍋もあっていいのだ。

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