外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない……体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。
6日間家を空けた後に行った「食の帳尻合わせ」

先月末、6泊の出張があった。出張の用意も大変だったけれど、同時にやらねばならなかったのが冷蔵庫の整理。出発前、生鮮食材はあらかた煮炊きして保存容器に入れ、それでも残ったものは分かるようにまとめて、ツレに「優先して使ってほしいのは、このへん」と伝えておいた。結構自炊力のある人なので、大概のものはレシピ検索などしつつ料理して食べてくれるのが、ありがたい。
帰宅してみれば冷蔵庫の中はスカッと空っぽで、妙にうれしくなった。「よし、空白を埋めていくぞ!」なんて気持ちがむくむくと湧いてくる。
買いものに出て、気持ちのおもむくまま素材を購入。手が自然とのびたものは、トマト、きゅうり、ピーマン、なすに鶏ささみ。それぞれ仕込んでいきますか。
きゅうりは4本1袋のを購入。そのうち2本は叩いて食べやすい大きさに切り分け、ビニール袋に入れて醤油、ごま油、いりごま、オイスターソースにラー油少々を加えて軽くもみ、余白のないように袋をきっちりしばって冷蔵庫へ。1時間もおけば、ピリ辛叩ききゅうりの完成だ。おつまみにするなら、塩昆布少々を入れてもいい。
残りの2本は輪切りスライスにして塩して軽く揉み、これまた冷蔵ストック。塩もみきゅうりスライス、作っておくと肉の付け合わせや、サンドイッチの具にと、かなり活躍してくれる。塩もみきゅうりとクリームチーズのトーストサンドなんて、夏の朝食にうってつけ。寝汗をかいた体にしみわたるおいしさ、体験してみてほしい。

ピーマンは半分に切って、へたと種を取り(気にならない人は取らなくてもOK、食べられます)、フライパンに油をひいて中火で両面を焼きつける。熱いうち保存容器に移して、めんつゆ(3倍濃縮)を軽く全体にまわるぐらい入れるだけ。そのままでもいいし、しらすやオニオンスライスなんかと和えるだけで、オツな一品になる。
なすはへたと先を落とし、皮をしまにむいて、ラップして2~3分レンジにかけてそのままおき、熱が取れたら冷蔵庫へ。食べたいとき適当に割いて、刻んだかいわれ菜でものっけて、おろしぽん酢をかければ冷やしなすのできあがり。暑さに疲れて帰ってきたとき、冷え冷えのなすを口に含むと「生き返るーッ!」なんて気持ちになれて、うれしいものだ。

トマトは小ぶりなもの(中ぐらいの大きさとミニトマトの間ぐらい)を湯むきして、白だしを薄めた汁にひたして冷蔵庫へ。1日ぐらい置いてなじませたい。湯むきは面倒だけれど、だしを含んだトマトの酸味って、夏の疲れを溶かす作用が本当に強いと私は思っている。そうめんのつゆにこのトマトを入れて、軽く崩しながら大葉と一緒にいただいてみてほしい。「仕込んどいて、よかった……」と私は毎度つぶやいてしまう。
鶏ささみはゆでてほぐしたものを、汁ごと容器に入れて、冷めたら冷蔵庫へ。今の時期は冷麺や素麺、冷やし中華なんかを食べることが多いので、たんぱく質要員として常備しておきたいのだ。
さあ、ひと通り仕込みが終わった。手が動くにまかせて料理するのは楽しい。普段は作り置きってしないんだが、料理をまったくしなかった6日間の「帳尻合わせ」的な作業といいますか。あれこれと「普段よく使うもの」を補充して、ちょっとした達成感が気持ちよかった。あとはビールを買って冷やしておいて、ツレの帰りを待つとしよう。
2025.07.29(火)
文・撮影=白央篤司