大人しく行儀のいいバンドからの脱皮?

伊藤 思うんですけど、アニソンっていう音楽ジャンルはないですよね? いろんなタイプの音楽がアニソンっていう枠の中で混ざり合っているだけで、アニメ番組の構成上のサイズが決まっていたり、特殊な構成や展開があったりすることはジャンルということではなくて“アニソンらしさ”。

山口 そうですね。オープニングやエンディングは、TV放送のサイズに合わせて、89秒や59秒の中で、「起承転結」をつくり、アニメへの期待感を高めるような役割を求められるので、一定の傾向がありますけれど、それ以外の楽曲は、オールジャンルですね。アニメの世界観と合っていれば、あとはノールールなのがアニソンなので、ヘビーメタルや民族音楽や前衛ジャズなどなど、いろんな要素があるのが面白みだと思います。作曲家にとっては、自分の得意技を活かしやすい分野なんですよね。

伊藤 では、今回の「夜は眠れるかい?」は何ですか? アニメのタイアップの主題歌ということは間違いないのですが、これをアニソンと言ってしまったら間違いですか?

山口 flumpoolなりに、アニメの世界観と擦りあわせて作っている印象はありますね。シングル曲なのに、過剰な「ポップ感」を求められなかったとも言えるかもしれません。

伊藤 確かに、この楽曲にはシングルらしい顔つきというものがないように感じます。それに、flumpoolといえば2008年のデビュー曲「花になれ」が印象的。たしか配信限定シングルで、au KDDI「LISMO!」のキャンペーンソングでしたね。女性的な美少年が無表情で歌っている姿が、テレビCMで何度も何度も流れて話題になりました。当時は、なんだか大人たちに作られたバンドという印象があって、大人しくて行儀のよい青年たちって感じだったけど。そんな彼らが今回の歌詞では「クソみたいな 愛情 友情 押し付けんじゃねぇよ」って歌っていて意外でした。

山口 デビュー当初は、よく言えばシンデレラ・ボーイ的、悪く言うと、大人たちに引っ張り上げられたバンドというイメージでしたが、8年経って、自分たちの足で立っているという印象を持ちました。さて、そんなflumpoolの「夜は眠れるかい?」から、どんな妄想分析が浮かびましたか?

伊藤 オレは今から眠ります。

 嫌なことばかりだ。ストレスっていう機関銃にメチャメチャに撃たれた。スキップしながら地雷を踏みまくったり、晴天の怒号から爆弾を落とされたり。ってか、あいつらはなんだ。そんな疑問も無駄、無駄無駄無駄。オレは人間として存在していない。心無いものとして存在し、そして爆風に飛ばされる。ビュ―――って。

 だけどさっき、もう眠ればいいんだ、と思ったら気が楽になった。そうか、友情とか大切にしなくてもいいか、愛とか別に捨ててしまってもいいか、夢とかカッコよく掲げなくてもいいか、泣けなくてもいいか、眠くなったら横になってもいいか、みたいな。まぁ頑張んなくていいよね、眠ればいいんだ。コタツ、ストーブ、タバコ、エンピツ、イヤフォン、エトセトラ。

 オレは今から眠ります。

山口 「亜人」×「夜は眠れるかい?」から湧き出た妄想ですね。

flumpool「夜は眠れるかい?」
A-Sketch 2016年2月10日発売
初回限定盤[CD+DVD]1,700円、通常盤[CD]1,200円(税抜)
■表題曲は、2015年から3部作のプロジェクトがスタートした映画『亜人』および2016年1月からTVでの放送とNetflixでの配信が始まったシリーズ「亜人」の主題歌。カップリングの「君が笑えば ~Just like happiness~」はブルボン「アルフォートミニチョコレート」のCMソングに起用されている。
■「夜は眠れるかい?」作詞/山村隆太 作曲/阪井一生 編曲/百田留衣
■オフィシャルサイトURL http://www.flumpool.jp/

【動画サイト】
「夜は眠れるかい?」

URL https://www.youtube.com/watch?v=dMGFcDByan4

2016.01.30(土)
文=山口哲一、伊藤涼