音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
RADWIMPS「ピクニック」

ヴォーカリスト自身が主演する映画の主題歌

伊藤 今回はRADWIMPSの「ピクニック」、同バンドのヴォーカリスト・野田洋次郎の初主演映画『トイレのピエタ』主題歌。

山口 ロックバンドに注目している伊藤さんですが、今回はRADWIMPSですか?

伊藤 はい、あの野田洋次郎が俳優業を始めるなんて、ちょっと意外だったので余計に注目しています。それにしても、よくこのオファーを受けましたよね。映画を観ていないので彼の俳優としてのポテンシャルはわかりませんが、アーティストとしてはかなりチャレンジングなことですからね。表現者としての次なるステージなんでしょう。映画も観てみたいです。

山口 注目され始めたのは10年以上前になりますね? 若くして売れたバンドで、大学生世代に熱狂的なファンを獲得して、世代を代表するバンドという印象です。

伊藤 メジャーデビューから10年ですね。彼らの存在を知ったのは「有心論」あたりからで、当時勤めていたメーカーのスタッフに熱狂的なファンがいて、「伊藤さんもRADWIMPS聴いてください! ぜったい彼らきますから!」って言われて素直に聴きました。結局、音源を聴いたらカッコイイなって思って、RADWIMPSのA&Rに逢いにまで行きましたよ(笑)。楽曲提供をオファーまでしたんですけど、タイミングが合わなくて実現しませんでした。

山口 ジャニーズ・エンタテイメントのプロデューサーとして注目してたんですね。NEWSへの楽曲提供をRADWIMPSで実現していたら面白かったのに、残念です。

伊藤 今回はまず、この映画『トイレのピエタ』ですよね。あの手塚治虫が死ぬ前の日記の最後のページに書いていた作品の構想を原案とする映画なんですが、それを聞くだけで観たいなって思える。

山口 観てみたいですね。試写会の案内、来なかったな(笑)。

伊藤 その試写会の面白い話があって、手塚治虫の娘が試写を観て「この映画の存在を知った時、正直タイトルにそれを使ってほしくはありませんでした。そして今日その完成作を観てあらためて使ってほしくはなかったと思いました。関係者の皆様、ごめんなさい。私個人の想いと手塚プロの考えは違うのです」という言葉を残しているのですが、これはこれでエンタテインメント業界の人間として興味深い。

山口 なるほど。そういう発言が漏れてくるのが珍しいですね。「問題作」ということで、ますます観てみたいですね。

伊藤 ですよね。

2015.05.31(日)
文=山口哲一、伊藤涼