音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
星野源「SUN」

俳優兼音楽家だがいわゆる二枚目路線ではない

山口 次に流行ると予測する伊藤さんの選曲は星野源ですか? 阿部サダヲ主演のフジテレビ系ドラマ「心がポキッとね」の主題歌ですね。「大人計画」好きなので、観たいと思ってました。録画してまだ観てないや。クチコミランキング「RUSH」(外部サイト)の5月8日付発売前ランキングで14位と、健闘しています。前週の5位からは落ちてしまいましたが、同週リリース作品の中ではUVERworld「僕の言葉ではない これは僕達の言葉」に次いで2位です。ドラマとの相性が良さそうですし、ヒットの期待感がありますね。

伊藤 星野源って随分前からドラマなどで観たことはあったんですけど、ずっと俳優だと思っていました。しかも、あんまり言い方は良くないけど、彼のもつ雰囲気からは、いかにも劇団出の脇役専門って印象でした。

山口 それは、一方的な見方ですね(笑)。SAKEROCKというインストバンドもそれなりに知られていたし、ソロのシンガーソングライターとして、立派にメジャーデビューしていますよ。

伊藤 みたいですね。イメージがガラッと変わったのが2011年に放映されたドラマ「11人もいる!」。真剣に観ていたわけじゃないんですが、ドラマ内で流れる曲が妙に気になったんです。毎回“家族とは”みたいな格言チックな歌が8小節だけ流れて、歌詞の内容も気になったんだけど、その歌声がやけにイイ。どうもその声の主がこのドラマにも出ていた星野源っていう俳優だってわかって、へぇ~この人って歌うんだ、って思ったんです。

山口 なるほど。そういう知り方をした人も結構いるみたいですね。文筆業と俳優業と音楽家と、それぞれに対してファンが付いてくるという珍しいタイプです。そして、どの入口からでも、最終的には星野源が好きになるという構図になっているようですね。

伊藤 なるほど。そのドラマの中で歌われていた曲は「家族なんです」という挿入歌で、作詞が宮藤官九郎、作曲が星野源。ドラマの為に書き下ろしたんだと思うけど、星野源の弾き語りバージョンが毎回少しずつ披露されていたって後で知りました。宮藤官九郎が仕掛けた、音楽家と俳優業という両方の星野源を生かす企画だったんですね。

山口 音楽家と俳優業の両立といえば、日本では福山雅治が一般的でしょうけど、僕は、山崎まさよしのブレイクのきっかけが、映画の主演だったのを思い出しました。

伊藤 そういえば山崎まさよしも俳優業をしていましたね。でも最近で言うと、均整のとれた“俳優とアーティストの二足のわらじ”って意味で、星野源がいちばんイイ雰囲気出しているのではないでしょうか。

山口 そうですね。俳優兼音楽家だと、いわゆる二枚目路線をイメージしますが、彼は、アンダーグラウンドの匂いがあるし、自分のオタク性も表に出しています。女性ファンが多いのに、エロネタを思いっきり打ち出しているのが興味深いですね。

2015.05.14(木)
文=山口哲一、伊藤涼