衝撃のファミリーレストラン! お目当てはしらす丼
翌日は、西村さんに高知のおいしいもの巡りに連れて行ってもらった。
かつおのたたきが有名な高知だが、しらすも自慢だという。鎌倉育ちなのでしらすはかなり身近で、ドロメ(生しらす)を食べる機会も多かったけれど、「ここがいちばんおいしいよ」と連れて行ってもらった「小松海産」の素晴らしいこと! とれたてのしらすをおじちゃん、おばちゃんたちが洗い、選別し、海辺の網の上で天日干し。しかも、「どうぞどうぞ」とすぐ食べさせてくれる太っ腹! あんまりおいしくて、大量のしらすと干物を自宅に送付。
ランチは「小松海産」のしらすを使ったしらす丼を食べられるというお店へ。
ここがとにかく強烈なのだ。「ビジネスホテル弁長」の中にある「ファミリーレストラン蝶」。ホテル自体がなんだかうっそうとした雰囲気で、「蝶」はその中でもさらに異空間。壁に大きく描かれた美しい惑星に照らされながら、妙に低い、ベルベット調の椅子に座り、正直不安な気持ちでしらす丼を注文……。
朝ごはんの定食のように登場したしらす丼こと「ちりめんドン」(正式名称)は、大きな丼にごはんがドサッ! ちりめんもドサッ! とのったもの。小さなおかずもついている。ここでのポイントは、高知の食卓の必需品「ゆのす」。どこのお店でもしらす丼にはゆのすがつきものだそうだ。
まずはゆのすなしでいただくと、しらすがふわふわ! そして、同時になめらか。うまみがとても強く、いままで食べたどんなしらすよりも、しらすの味がしっかりと広がった。高知自慢のお米もやたらとおいしいので、奇抜な内装のことを忘れて調味料なしなのに広がる豊かなおいしさに身を委ねる。
さらに、ゆのすをかけてみる。これはすごい! そもそもしらすがおいしいので醤油などをかける気は起きないが、ゆのすはしらすをおいしくしている! 高知県民には当然のことなのだろうが、初めての体験に本当に驚いてしまった。決してお寿司というわけではないのだけれど、米と米、しらすの間に広がるゆずのほのかな酸味は、なんとなく寿司の原点を思わせるもの。
いやはや、素晴らしきしらす&ゆのす体験。もちろん、しらすを自宅に送ったからには道の駅でゆのすもしっかりと買い込んだのであった。
ほかにも、いも・栗関係のおかしや酒盗、かつおやさばの加工品、土佐あかうしと、とにかく食べたいもの、買いたいものが多い高知県。人が明るくて、人懐っこく、面白いのも、こんな豊かな食文化の中にいるからなのだろう。移住希望者が多いというのも大きく頷ける高知の魅力。うーん、早く再訪したい。
ファミリーレストラン蝶
所在地 高知県安芸市矢ノ丸1-7-19
電話番号 0887-34-1177
[2015年11月末来訪]
北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」
Column
北條芽以のLOVEレストラン
美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!
2015.12.30(水)
文・撮影=北條芽以