支えになっている父からの言葉

――ご自身の演技についてはいかがでしたか? また『羊をかぞえる。』ではどんな新しい廣瀬智紀が見られると思いますか?

 僕自身も映像でここまでコミカルな演技をしたことがなかったので、今後はこういうお芝居もどんどんやりたい、と思いましたし、何より演じていて楽しかったんです。それに毛利監督から「イケメン俳優に三枚目キャラを演じさせると、どこか嘘っぽくなることが多いけれど、しっかり演じてくれた廣瀬くんに感謝している」というお褒めの言葉をいただき嬉しかったです。キャラクターを作り込むときは、そこに廣瀬智紀が見えてはいけないと思うし、その世界で生きたいと思うし、歩き方まで変えたいと思っているんです。だから、この映画の中では新しい廣瀬智紀が見られるというよりは、丸井裕之という役を感じてもらいたいと思います。

――以前「俳優を続けたい」と言ったとき、お父さんから「30歳までだな」と言われたそうですが、次第にその30歳が近づいていますね。

 舞台をいくつか経験させてもらった後、初めて父とお酒を飲んだときに言われた言葉ですが、それって「中途半端に仕事をやるなよ」という意味だったと思うんです。その後に「俺がいちばんのファンだから」と言ってくれたし、僕が40、50、60歳まで役者をやっていたとしても、ずっと応援してくれる存在だと思います。そういう気持ちには、しっかり応えたいと思うし、まったく辞めるつもりはないです。今はイケメンのくくりとしてのお仕事が多いんですが、だんだんと渋い役もやりたいと思います。正解はないにしろ、自分の中では、まだ「お芝居とは何なのか」を分かっていないので、この先もやっていくうえで、少しずつ探していきたいです。そうすれば人間としても、もっと成長できると思うんです。

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2015.10.23(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美