舞台「弱虫ペダル」巻島裕介役との出会い

――その1年後には、初めての舞台「しゃくなげの花」に出演されますが、そこで初めて俳優として不完全燃焼な気持ちを味わったそうですね。

 その頃の僕は何も知らなかったこともあって、自分の中で勝手に、事務所に入ればお仕事の話が来ると思っていたんです。でも、簡単にはオーディションに受からない。それに「俺は役者をやってやる!」という気持ちが弱いまま、小・中学生と一緒にレッスンを受けていたこともあって、だんだん辛くなってきて、「なぜ、自分はここにいるんだろう?」と思うようになり、あまりレッスンに行かなくなってしまったんです。ちょうどその頃、初舞台の話が決まり、「僕を選んでくれた方のためにも頑張りたい!」と思い、一生懸命勉強してやらせてもらいました。本番には自分の家族や知り合いも来てくれて、嬉しかったのですが、やっぱり経験不足だったこともあり、どこか不完全燃焼な自分がいたんです。そこで改めて演技を学びたい、レッスンを受けたいという気持ちになり、マメに通うようになりました。

――その後、11年放送のドラマ「私のホストちゃん ~しちにんのホスト~」への出演が大きな転機となったと思いますが、舞台での転機になった作品は?

 本番中に鼻血を出して大変だった初舞台も忘れられませんが(笑)、自分を変えてくれた作品といえば、やはり「弱虫ペダル」です。原作モノをやらせていただくのも初めてで、アニメ版が放送される前ということもあって、漫画のコマを自分で演じる楽しさを感じたり、普段から「~ッショ!」という巻島裕介の口グセをマネしてみたり、原作ファンの方に楽しんでもらう難しさを知りました。また、裕介役を僕の前に演じられていた馬場良馬さんがいらっしゃったことで、できるだけ参考にさせてもらいました。やっぱり、馬場さんの巻島裕介を見ていたお客さんに、自分なりの裕介を受け入れてもらいたかったので、馬場さんの影みたいなものを大切にしたいと。そういうこともあって、この作品との出会いは大きかったです。

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2015.10.23(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美