イジメられっコを演じた『渇き。』の現場で学んだこと

――初めての仕事は、イジメっコの沢村翔太役を演じたドラマ「高校入試」ですか。

 初めての仕事は『震動』という映画で、その後にすぐ「高校入試」が決まりました。そのときの作品は、恥ずかしくて、今も見返すことができませんね(笑)。でも、誰でも初めてはあると思いますし、とてもいい経験になった現場だと思います。その後に出演した『陽だまりの彼女』でも中学時代のヒロインをイジメる役でしたし、ちょっとツンツンしている役が続きましたね。

――そして、中島哲也監督の『渇き。』でのイジメられっコ“ボク”役で一躍注目を浴びるわけですが、オーディションの様子は覚えていますか?

 それまでは台本ありきで芝居をしていたのですが、オーディションでは初めてアドリブを求められたので、緊張しましたし、苦労したことを覚えています。兄が中島監督の『告白』に出演していて、とてもハードな現場で、中島監督も厳しい方と聞いていましたので、ある程度の覚悟はしていましたが、オーディションからこれほど大変だとは思いませんでした。

――中島組で体験した印象的な出来事があれば教えてください。

 二階堂ふみさんが演じた遠藤を橋の上で待っているシーンがあって、突然監督から「そこの動きを自分で考えろ」と言われたんです。まったく考えられなかったんですが、最終的に30テイクぐらいやって、OKが出たんです。そのとき、監督から「台本に書いてあることだけを演じようとするから、いざというときに考えられない。だから、台本に書いてないことも常に考えて、それをいつでも試せるようにしなさい」と言われたんです。その経験以来、どこか心に余裕ができて、思い切って芝居ができるようになりました。

2015.04.17(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘