江戸時代を代表する俳人・小林一茶の半生をたどりながら、推理劇の要素を含んだ井上ひさし作の舞台「小林一茶」。これまでの一茶像を裏切るキャラを演じるのが、朝ドラ「ごちそうさん」の泉源太役で一躍注目を浴びた和田正人。学生時代、箱根駅伝にも出場した経歴を持ち、陸上選手から俳優へと転身した彼が、10年を振り返る第2回。
すべてが愛おしい存在だった「ごちそうさん」の源太
――13年の連続テレビ小説「ごちそうさん」で演じた源太についてですが、これはオーディションで決まったんですよね。
はい、朝ドラのオーディションというのは分かっているのですが、何の役のオーディションかは教えてもらえないんですよ。でも、受ける前に渡された簡単な台本を読んだとき「この役をやりたい」と思ったのが源太だったんです。関西弁ということもあって、単純にイメージが湧いたのもあったのですが、最後の最後まで僕にとって愛おしい役でした。だから、彼が戦争から戻ってきてからのシーンの撮影のために減量をしたりもしましたが、彼に対する役作りは全然苦じゃなかったです。今も続けている毎朝のジョギングを始めたのも、源太のために、というのがきっかけです。
――さらに14年には「半沢直樹」のスタッフによるドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」で、実業団の野球部員・北大路犬彦を演じました。実際に社会人のスポーツ選手を演じることについての想いはありましたか。
所属した実業団の陸上部が廃部するというのを実際経験したこともあり、今回のキャストの中でも唯一その点は僕だけが経験していることだったので、犬彦を演じる際も物語や役についての実感や想いは一層強かったです。あと、役に求められていたのは、とにかく野球ができるか、できないかということ。僕、ソフトボール経験はあったのですが、野球ではないので、その点ではかなり苦戦しました。何度も練習を重ね、犬彦という役をいただくことができ、とても光栄でした。
――デビューから10年、現在の個人的な心境はいかがでしょうか。
実業団の廃部をきっかけに、この世界に入り、スタートしたわけですが、俳優を続ける上で、昔、陸上選手として活動していたときに、親や恩師が教え子に対して思ってくれた誇らしさを超えたい、と思って取り組んでいたんです。でも、「ごちそうさん」で源太を演じたことで、みんな喜んでくれて、やっと陸上をやっていた頃と並べた気がするんです。メディアに出る数も増えましたし、そういう形で恩返しができたのはうれしいですね。10年経ちましたが、今がスタートライン。いろんなメディアにお声がけいただけることも増え、先日恩師と再会したときに、僕の出演情報を覚えていてくれたりと、僕が頑張ることを楽しみにしてくれる方たちのためにも、もっともっと頑張っていきたいと思います。
2015.04.03(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央