今月のテーマ「W不倫」
【MAN】
膨れ上がる思いを必死に自制する二人の純愛不倫
浮気の境界線は人それぞれ。一般的には「肉体関係を持ったら不貞」と見なされるわけだが、肉体関係どころか肉体的接触すらほぼない(手はつないだし、ほんの一瞬ぎゅっとしたことはあるけど)麻衣子と二葉さんのような抑制した関係のほうが、よほど官能的で、思いの深さも感じてしまう。
麻衣子は、ベランダの仕切りを蹴破って会いに行きたいほど二葉さんが好きなのに、夫と〈同じようにはなりとうない〉と踏みとどまる。二葉さんもまた妻への責任感から、一線を越えないように必死だ。二人が言葉を交わすのは、朝のゴミ出しのときだったり、帰ってこない配偶者を待つ夜のベランダ越しだったり。ときどき脳内で浮き輪をイメージして摑まっているのは、好きという感情に溺れないように、なのだろうか。
不倫を応援してどうする……と思いながら、二人の切なすぎる純愛には、いずれ思いを遂げられる日が来ますようにと祈らずにいられない。
『うきわ』(既刊2巻) 野村宗弘
麻衣子は夫の浮気を知ってしまい、問いただせない苦悩を、夫の上司で、社宅の隣人同士という縁もある二葉さんに打ち明けた。配偶者の浮気を知っていて聞けないという、同じ境遇のやるせなさを抱える二人はやがて単なる相談相手として以上に惹かれ合ってしまい──。
小学館 各552円
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2014.09.18(木)
文=三浦天紗子