今月のテーマ「自由という不幸」
【MAN】
自由すぎる男たちは哀しくて、可笑しくて、愛しくて
福満しげゆきの『僕の小規模な失敗』、青野春秋の『俺はまだ本気出してないだけ』等々、男子マンガでは、いい年をして夢や青春をこじらせている人、自己客観視できない人をよく茶化す。突き放さないといたたまれないのだろう。そして、その恥ずかしさをメタに捉え直すことで、なんとかしのごうとするのが男子の自意識だ。主観と客観がぐるぐるにスパイラルし、自意識をどこまでも肥大させ続けられる自由。それがかえって不自由の種になりそうな切ない現実はあれど、その種はやっぱり「自由」という土壌で育てられるのがふさわしい。本書の主人公たちを見れば、それがよくわかる。育ちきったその先に、誰も見たことがないその人だけの花が咲く。どんなに不格好な花だとしても。
「テレビブロスを読む女の25年」など女子主人公の作品も入っているが、描かれている空回り感はむしろ男子の自意識……と思ってたら、「私はまんまコレです」って言われたわ。
『カフェでよくかかっている
J-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』 渋谷直角
「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」等々、収録作のタイトルだけでもイタ切なさ全開。サブカルの固有名詞の懐かしさとともに、ボディーブローのように効いてくる。
扶桑社 1,100円
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2014.06.04(水)
文=三浦天紗子