季節の変わり目は、食べたいと思ったものを食べる

 ゴーヤーは種を取ってスライス、トマトはざく切り。あらくみじん切りにしたしょうがと一緒に鶏ひき肉を炒めて、軽くほぐしたところにゴーヤーとトマト、塩を加え、全体がしんなりするまで炒める。カレー粉を好みの量加えてサッと煮れば完成だが、きょうはタイ料理のカレーにしよう。成城石井で見つけたレッドカレーペーストが、値段が手ごろで味もなかなかよく、気に入っている。

 ペーストを加えてさらに炒め、ココナッツミルクを加えてサッと煮れば出来上がり。なんだけれども、使い切りたい豆乳があるので、きょうはそちらで。ココナッツよりあっさり仕上がって、これはこれでなかなかいい。ちょっと煮詰めて味見、「さっぱり食べたい」という気持ちから、カルダモンパウダーに山椒の粉も少々加える。うん、なかなかおいしいじゃないか。

 昔から「季節の変わり目は体調に気をつけよう」なんてよく言うが、特に秋口は夏の疲れが出やすいもの。ましてや日本人がこれまで体験してこなかったような激暑が続いている。丈夫な人だっておかしくなって当然ぐらいの気構えでいいのではないだろうか。

 なのでこの頃は「しっかり食べる」に加え、「しっかり休む」も心がけている。忙しくてそうもいかない人が多いだろうけれど、せめて1日のうち15分ぐらいでも意識的に体を、心を休める時間を設けたい。そして「食べたいと思ったものを食べる」のは、立派な癒し法だと私は思う。体が求めているものを感じ取って、メニューに活かしていきたい。さらには最近食べ過ぎなもの、逆に足りていないものを見直して、献立作りに活かしたい。

 そんなあれこれが、次の季節を迎えるための“体の帳尻合わせ”なのかもしれない。てなことを考えつつ、きょうも台所に立つ。

白央篤司(はくおう あつし)

フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」がメインテーマ。主な著書に、日本各地に暮らす18人のごく日常の鍋とその人生を追った『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)、『はじめての胃もたれ 食とココロの更新記』(太田出版)がある。
Instagram @hakuo416

Column

白央篤司の帳尻あわせ食日記

外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない…体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。

2025.09.18(木)
文・撮影=白央篤司