オデオン座:大正昭和ロマンの香りがただよう、劇場建築を堪能

木造芝居小屋・オデオン座は、うだつの町並みから歩いてすぐ、吉野川の支流が流れるそばに佇みます。昭和9年に建てられて以降、涼しい風が吹くこの場所で時を刻んできました。ですが、今日までにさまざまなドラマがあったとか。
戦後、映画館として親しまれたものの、映画業界の斜陽化により1995年に閉館。老朽化も伴ったことで取り壊しの対象として目を向けられました。


風向きが変わったきっかけは、1996年公開の山田洋次監督による映画「虹をつかむ男」の舞台に選ばれたこと。「男はつらいよ」シリーズで愛された渥美清さんの急逝を受け、西田敏行さんの主演によって制作された同作。オデオン座は作中で、西田さん演じる主人公が営む映画館として同名で登場し、広く知られることに。
映画の公開を経て、取り壊しを惜しむ声が多くあがったことを受けて、1998年に町指定文化財に認定。修繕の末に、一般公開されることとなりました。
現在も映画の上演や演劇が催されているほか、地元の人々の日本舞踊や詩吟の発表会の会場としても使われています。時には、子どもたちに映画の歴史を伝えていくために、無声映画の上映会が行われることも。古きよきものを今に繋いでいます。



オデオン座
所在地 徳島県美馬市脇町大字猪尻西分140-1
入場料 大人/200円、小中学生/100円
営業時間 9:00~17:00
2025.09.06(土)
文=福永千裕
写真=杉山拓也
ヘアメイク= 菅長ふみ
スタイリング=中井彩乃