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 伝統と豊かな自然が共存する、徳島県美馬市。市域の約8割を森林が占める、緑と清流に恵まれたこの地は、かつて国内でも有数の藍の産地として発展してきました。その富の象徴として商人たちが建てた、“うだつ”を有する町屋が並ぶ、うだつの町並みは今もその歴史を物語ります。そんな美馬市・うだつの町並みを、市内に工場を構えるネストローブ(nest Robe)の服をまとった俳優・山田杏奈さんと散策しました。

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うだつの町並み:藍で栄えた街の江戸時代の姿を残した、ノスタルジックな通り

 うだつの町並みは、かつてこの町を見下ろした脇城の城下町だった通りで、藍の集散地として繁栄。現在も江戸時代中期から昭和初期に建てられた約85棟の建造物が軒を連ねます。際立つのは、屋根の両端に隣家からの火災時の延焼を防ぐために作られた“うだつ“が見られること。

 設置に費用がかかる“うだつ”は経済的な豊かさの象徴で、のちに装飾も兼ねた豪華なものが主流になっていきました。

 江戸時代のノスタルジックな情緒が宿るこの通りは、約430メートルに渡ります。藍染めを施した衣類・雑貨を販売する店や、和傘づくりの体験ができる美馬市伝統工芸体験館、竹細工に触れられる土産もの店など、日本の繊細な伝統工芸に触れられるお店がずらり。一方で、先人が残した古い家屋を活用した、若い喫茶店や雑貨店もあり、伝統と現代が交差します。

吉田家住宅:街いちばんの豪商の仕事ぶりに思いをはせる

 うだつの町並みを象徴するのが、ひと際の存在感を放つ吉田家住宅。1792年に創業、藍の売買で財を成した豪商・吉田直兵衛が暮らした屋敷で、美馬市指定文化財のひとつ。うだつの街並みのなかでも最大の約600坪の広大な敷地に、中庭を囲んで主屋と質蔵、藍蔵など5棟が構えます。うだつの町並みでも、人の住んだ家屋を一般公開しているのはここだけ。

 吉田家住宅では、江戸中期から後期の豪勢な日本の建築様式を堪能できます。商談に使った店の間や使用人部屋、裏手の石段を降りれば目の前に船着場があることからも、藍の商人の仕事ぶり、その繁栄ぶりを思わされます。現在は、毎年開催される生け花の企画展「うだつをいける」の会場にもなっているそう。エントランスでは、現在も藍染めを施した衣類や雑貨、のれんなどを販売しています。

吉田家住宅

所在地 美馬市脇町大字脇町53番地
入場料 大人510円/子ども250円

2025.09.06(土)
文=福永千裕
写真=杉山拓也
ヘアメイク= 菅長ふみ
スタイリング=中井彩乃