この記事の連載
二宮和也さんインタビュー【前篇】
二宮和也さんインタビュー【後篇】
「カンヌに呼ばれた時は焦ったんじゃないか?」

――海外メディアからの質問で印象に残っているものはありますか?
この役をオファーされた時の気持ち、というような質問ではなく、この作品全体、物語がない原作をどう物語化したのかっていうものが多かったです。
川村元気監督が一番驚いていたのは、「主観から客観に切り替えるタイミングがなぜあそこだったのか?」っていう質問でしたね。それと、「カンヌに呼ばれた時は焦ったんじゃないか?」という質問。つまり、もし(5月の)カンヌを狙ってるんだったら、もっと早くから編集してたはずだ。おそらく年明けぐらいから編集したのだろうから、狙ってなかったんだろうけど、って意味で。なぜそんなことがわかるんだ、って思いました(笑)。
記者さんたちのカンヌ国際映画祭についての知識がとても深かった。「呼ばれてよかったね」みたいなことを言ってくれましたが、実際、選考に出す時点では編集が終わっていなくて、(合成用の)グリーンバックのままの部分があったり、「ここにこういうセリフが入ります」というテロップが入った段階のものを送っていたんです。取材に川村監督が同席していたこともあって、単独でやらせていただく取材とは違って、質問がすごく新鮮でした。

――今回、二宮さん自身が企画の段階から関わっているというのは、新しい経験だったんじゃないかと思いますが、いかがでしたか?
僕は題材になった「8番出口」という原作自体を知ってはいたので、それをどうやって映画として成立させていくのかということに興味がありました。お話があった時にやりますと即答して、すぐに脚本作りに入っていきました。
少ない人数で、ああだこうだ言いながら最初の本作りから進めていったのは、確かに初めてだったかもしれないので、すごく楽しかったですね。まず自分たちが楽しいものを作っていき、結果的にそれが新しく見えたらいいなと。どうやったら物語として観る人に興味を持ってもらえるようになるか、という形で作っていきました。
――脚本協力という形になった経緯を教えてください。
最初から僕は、おそらくこの作品の脚本には時間がかかるだろうな、と思っていたんです。なぜならば、登場人物はほぼ僕1人。僕がいないと、成立しない映画になる。特にこの映画は、ずっと同じ場所をループしてる話なので、映像に変化がつくわけではない。もし、現場で監督たちと、ああだこうだと話し合いになったら、なかなか進まなくなるだろうと思ったんです。なので脚本の段階から僕も入っていくっていう手段をとりました。本当に出口が1つになれるように、僕も最初から入った方が良いだろう、と思っただけです。
2025.08.27(水)
文=石津文子
写真=太田好治