この記事の連載
二宮和也さんインタビュー【前篇】
二宮和也さんインタビュー【後篇】
演じ手にとって最初の観客は監督

――具体的にどこにこだわり、どういう方向性で話を進めていったのか教えてください。
話の本筋に関しては、僕が入った頃にはざっくりとしたものは出来ていました。ただ、後半のある展開については、話し合いを何度かしましたね。
あとは、この周回で何をするか、という部分ですね。たとえば撮影で、「今日は1周目から3周目をやります」となった時、1周目から3周目の間にどういった波を作っていくのか、もしくは波がいるのかいらないのかを考える。4周目から5周目には何が来るのか、っていうのをずっとみんなで考えながらやってました。もちろん台本はあるんですけど、ここで何か1個欲しいかもというときに、6週目にあれがあるから3週目にはこれをやっときたいなとか、そういう感じでずっと撮影していきました。
だから途中からはみんなあまり台本を読まなくなって、カメラと照明と録音部と演者側とで毎回全部揉んで、一度チャレンジしてから、それを監督に提案してみる。毎回課題を提出するみたいな感じでしたね。
――川村監督は、その「揉む」場には入らないんですか?
もちろん現場にはいるけれど、撮影をとても広い場所でやっているので、いちいち細かく言いに来るのが大変。だからまず朝にみんなで集まって、あとは現場の人たちとやってくみたいなのが割とベースでしたね。
台本にはここに異変があるけど、こっちにした方がいいのでは、みたいなことを提案すると、監督もすごい楽しんでくれていたので、撮影の自由度は本当に高くてありがたかったです。演じ手にとって最初の観客は監督なので、この人が楽しいと思ってくれればいいかな、と思ってやらせてもらいました。
》【後篇】「東京なんて実は穴だらけ」どこまで行っても同じ駅や通路…二宮和也が見つけた日常に潜む“異変”
二宮和也(にのみや・かずなり)
1983年6月17日生まれ、東京都出身。1999年に嵐のメンバーとして「A・RA・SHI」でCDデビュー。俳優としては『青の炎』(03年)で初の映画単独主演を果たし、2006年にはクリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』で主要キャストの1人を演じた。2015年に『母と暮らせば』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。最近の主な出演作は『浅田家!』(20年)、『ラーゲリより愛を込めて』(22年)、『アナログ』(23年)など。
『8番出口』2025年8月29日公開
白い地下通路を歩き、8番出口を探す男。しかし何度もすれ違う男に違和感を覚え、やがて自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。
出演:二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
監督:川村元気
原作:KOTAKE CREATE「8番出口」

2025.08.27(水)
文=石津文子
写真=太田好治