この記事の連載
二宮和也さんインタビュー【前篇】
二宮和也さんインタビュー【後篇】

映画『8番出口』で主演を務めた二宮和也。本作のベースとなっているのは、インディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATEが個人で制作した同名ゲーム。二宮は出口を求めて地下通路をさまよう男を演じているだけなく、脚本協力としてもクレジットされている。『8番出口』は、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門で公式上映され、二宮は8分間のスタンディング・オベーションを浴びた。
カンヌで感じた手応え、作品づくりにかけた思いについて、二宮に話を聞いた。
リリー・フランキーさんにも声をかけていただいた

――実はカンヌでのミッドナイト・スクリーニングの時、二宮さんの近くで観ていました。
おお!
――上映後のスタンディング・オベーションで感極まって、二宮さんが涙を浮かべているように私には見えたのですが、あの時の率直なお気持ちと、カンヌでの体験が今後に与えるものなど、教えてください。
感動しましたね。それはすごく。カンヌがどうこうっていうよりも、自分たちが関わる作品がある一定の評価を得るということに、すごく感極まっていたと思います。あと、しこたま眠かったです(笑)。本当に深夜の上映でしたから、とても驚きましたね。
作品の上映中は、もう直せるところは本当にないのかっていう目線で観ていました。直し目線で観ていても、感動できるところでは感動できる、いいお話だなと思えたので、評価とか評判とかっていうよりも、単純にその映画の本質で感動できたっていうのが一番大きかったですね。
プラスアルファとして、異国の地で評価をしていただけことに感動しました。X(旧Twitter)にも書きましたけども、カンヌでは日本の作品が届いているんだなって感じることが多くて、「『浅田家!』を観ました」っていろんな人に言われました。ドライバーさんにも言われたし、遠いパリまで観に行ったという話を聞いたり、それが印象的でしたね。やっぱりみんな、映画がすごい好きなんだなって。

カンヌではちゃんとドレスコードを守って、こういう尖った作品を観に行く。男性も女性も華やかに着飾って、気分をあげて映画を観に行くという一連の流れも含め、作品を愛していただけるというのはすごく新鮮でしたし、感じるところがありました。僕が海外の映画祭にあまり出たことがなかったってのもあるんですけど、こういう経験をさせてもらえて嬉しかったですね。(2007年に『硫黄島からの手紙』で参加した)ベルリン映画祭とはちょっと違う感覚はありました。
――ベルリン映画祭とカンヌ映画祭では何が違ったんでしょう?
ベルリンはめちゃくちゃバタバタしていて。ドラマを撮ってた時期だったからか、そういう印象なんですけど。空港から車に乗って、10分か15分ぐらいのところで、「もう車の中で着替えましょうか」みたいな。実際には雪の中、道路で着替えて(笑)。カンヌでは個別取材がありましたけど、ベルリンでは大勢に囲まれての取材会で、自分のパーソナルな部分を聞かれたりとかもしてたので、そこが違うところだったり。
また、ベルリンの時はすぐパリに行って上映してみたいな感じで大変でしたが、今回はその時よりゆったりできた感じだったし、違う作品でカンヌに来ていた日本の人たちもいて。リリー・フランキーさんにも会場で観ていただいていて、「よかったよ」なんて声をかけていただいて。「ありがとうございます」って言いながら、「日本の人たち、優しいな」って感じてました。とにかく、カンヌはすごく良かったですね、印象としては。
2025.08.27(水)
文=石津文子
写真=太田好治