「兄貴と憎み合ってるまま再結成なんてありえない。そんなフェイク、観客に見抜かれちまう」

 「リアル」にこだわる男、リアム・ギャラガーも断言していたように、兄弟バンド、オアシスは、2009年の解散以来ながらく不和がつづいていた。しかし、昨年、再結成ツアーが発表され、今では来日公演も迫っている。一体なにが起こったのか?


不良に金槌で頭を殴られ、音楽に目醒めた10代

 イングランド北部マンチェスターの労働者階級のギャラガー家には三人の兄弟がいた。1972年に生まれた末っ子のリアムが小さかったころ、兄弟の母が暴力的な父のもとを去ったことでシングルマザー家庭となった。

 父への怒りを抱えて育ったリアムは暴れん坊の問題児に成長。音楽に興味がなかったというが、15歳のとき、ライバル校の不良に襲撃されて金槌で頭を殴られることをきっかけに「音楽に目醒めた」という逸話を持つ(一方、もっと現実的に、サッカーの練習よりもいい感じに楽なロックに行き着いたのだと明かしたこともある)。

 18歳のころには、知り合いのバンド、ザ・レインに加入。ちょっとした挑戦だったが、心の底では、成功できるとも感じていた。実家で部屋を共有していた5歳上の次男、ノエルがいい曲をつくっていると知っていたからだ。

 バンド名はオアシスに変更され、ノエルがリーダー兼作曲家として参加。兄による古風でメロディアスなサウンドと弟のカリスマ的な歌声の相性は抜群で、1994年にメジャーデビューするやいなや人気が爆発した。

弟をバットで殴打…メディアを賑わせた、激しすぎる兄弟ゲンカ

 オアシスの魅力は音楽だけにとどまらない。ギャラガー兄弟といえば、傍若無人で型破りなロックスターとして知られている。航空会社やホテルからの出禁処分、ライバルバンドとの確執など、ゴシップにも事欠かなかったのだ。

 なにより、バンドメンバーが入れ替わるなか、兄弟間の衝突が絶えなかった。関係者いわく、ノエルは内向的な仕切り屋。リアムは衝動的で短気。正反対の二人が織りなす罵詈雑言に満ちた口論は、当初はじゃれ合いの面が強かった。しかし、デビュー翌年に口喧嘩の録音が勝手にリリースされるとパパラッチに追いかけ回されるようになり、バンド内でもドラッグ摂取量が増えて雰囲気が変わっていったという。

 有名なエピソードはバット事件。スタジオでノエルが楽曲制作をしていると、遊びに出ていたリアムが酔っ払いをぞろぞろ連れてきて言い争いに。怒り心頭となった兄はクリケットのバットで弟の後頭部を殴打。怒ったリアムもギターを破壊した。

 このとき作られていた2ndアルバム『(What's the Story) Morning Glory?』(1995)は累計2,200万枚を売り上げる大成功を記録し、彼らに国民的バンドの地位を授けた。翌年の1996年のネブワース公演では、イングランド史上最高となる当時の人口4%分の応募が殺到した結果、25万人の前で歌うという伝説を打ち立ててみせる。

次のページ 兄弟仲が原因で解散、弟・リアムの人生はどん底へ