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画面に映し出された手は……

その頃になると、荒く途切れ途切れではありましたが音声が戻ってきていました。
『……うしゃには、トイレの花子さん、テケテケ、紫ババア……●●●●ちゃんな……このように様々な学校の七不思議がい――』
突然、映像が止まり小刻みに揺れ出しました。隣でリモコンを持っていたIさんが一時停止を押していたのです。
「これ学校の怪談的なのを紹介するやつだよな。最後の名前、あれ誰?」
「…………俺だ」
「え……お前の名前じゃなかっただろ」
「違う、画面端でスケッチブック手渡していたのが俺なんだよ」
Uさんの脳裏には忘れていたあの悪夢の記憶、そしてその先に眠っていた恐ろしい記憶の輪郭がぼんやりと浮かび上がってきていました。
「俺、このとき画面の外にいてスケッチブックを渡しながら『よりにもよってあのこと紹介するのかよ』って思ったんだよ」
脳裏に浮かんでくるガードレールとお供えの花と缶ジュース。
「な、何言ってんの……おい、ちょっとマジで怖くなってきたんだが……」
「続き再生してくれない?」。Uさんはそう言いました。
『――という噂を今日は私たち放送部が究明するというわけですね!』
『はい、そういうことです。おっと、早速問題の教室に……』
映像がとある教室に差し掛かると再び音声が乱れ始めました。
そればかりか、無邪気に笑い合う彼らの音声は不気味に歪み出し、映像は異様な雰囲気を帯び始めたのです。
2025.08.12(火)
文=むくろ幽介