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Iさん宅で気が付くと……

 あとで聞いたところによれば、Uさんはそのビデオを目にするなり駆け寄り、Iさんの手からそのビデオを嬉しそうに奪い取ったというのです。その後、同窓会も無事終わり、Uさんと友人のFさんは地元で暮らしていたIさんの家にお邪魔することに。

 けれど、Uさんの中でその記憶がすっぽり抜け落ちているのです。記憶がはっきりと戻ったのは、Iさんが「お前さぁ~、これがホラー映画だったら死んでいるやつの行動だぞぉ~」と自分の手からあのVHSを受け取っているところでした。

「でも、Uがこのテープのこと気にするのもなんとなくわかるかもなぁ。やっぱり何回思い返しても放送部が解散した理由思い出せないし。みんなも今日知らないって言っていたもん」

「え、あの……」

 事態をうまく飲み込めていないUさんをよそに、そのVHSテープはカチャンと音を立ててデッキに飲み込まれてしまったのです。

◆◆◆

 ザッ…ザザー……プツッ。

 砂嵐の後に始まった映像には、学校の校舎前で中学一年生くらいのキャスター役と思しき男女が、マイクを持ってテレビのレポーター風に何かしゃべっている様子が映し出されていました。

「音小さい?」

「いや、小さいと言うか切れているのかも」

「この2人、放送部のメンバーだよな。名前誰だっけ?」

「う~ん……ここまで出ているんだけど」

 画面にはマジックで大きく『●●放送部、夏の納涼特集』と書かれたスケッチブックが映り込んでおり、それが退かされるとキャスター役の2人がこちらに何かを説明したあと、笑顔で古い校舎の方に入っていきました。

 西日が差し込む旧校舎の中をノロノロと紹介するように歩き回る2人。男の子の方が画面外にいた誰かからスケッチブックを手渡されると、テレビレポーターがパッと画面に映しました。

2025.08.12(火)
文=むくろ幽介