この記事の連載
キャンメイクインタビュー【前篇】
キャンメイクインタビュー【後篇】

プチプラコスメのコーナーで紹介すると、毎回大きな反響があり、担当者をいつも驚かせているのがキャンメイク。
2025年、1985年の誕生から40周年を迎えたキャンメイクですが、定期的にバズリコスメを生み出し、読者の心をつかんで離さないアイテムは、一体どのように生み出されるのか? なぜプチプラ価格をキープできるのか?
ブランドの魅力を探るべく、そんな疑問を直球でぶつけさせていただき、PRの山口ゆきさんに語りつくしていただきました! 懐かしのものから直近の大ヒットアイテムまで7点のご紹介も含め、2回にわたってお届けします。
》後篇:懐かしのあのアイテムも!? キャンメイク創業当時から2025年までの7大ヒットアイテムを振り返る
“バズりコスメ”を生み出し続けられるのはなぜ?
――今年誕生40周年ということですが、ブランド誕生の経緯を改めて教えてください。
山口裕紀さん(以下、敬称略) はい。40年以上前に、当時の社長が欧米視察に訪れた際に、現地のスーパーマーケットなどで、手に取りやすい価格のコスメがたくさん売られている光景を見たそうなんです。それで、「日本のセルフコスメは、価格が高すぎるのではないか?」という疑問を抱いたそうで。そこで、「日本でも1,000円以内くらいの、もっと気軽に選べるコスメを作りたい」と決意して、1985年にキャンメイクが誕生しました。
――会社としてはキャンメイクが一番最初のブランドなのでしょうか?
山口 グループ会社となる井田両国堂の方が歴史は長いのですが、キャンメイクの製造元である井田ラボラトリーズとしては、初めてのブランドです。


――キャンメイクさんは、日本のプチプラコスメというジャンルを開拓してきたパイオニア的ブランドだと思いますが、ここまで人気が続いてきた理由はどんなところにあると思われますか?
山口 ありきたりの回答かもしれないのですが、常にユーザー目線で開発をしてきているところが一番大きいと思っています。例えば市場の分析結果やデータ、エビデンス、というようなものに頼り過ぎず、企画担当者が、いちユーザーとしての目線で発案し、その思いや意思に重きを置いて製品を開発しています。私も以前、商品企画を7年ほど担当していたのですが、自由度高く商品化させてもらっていました。
――では商品企画の方が、「次はこんなものを」と提案した時に、反対されるようなことはあまりないのでしょうか?
山口 いえ、もちろんNGになる製品もありますし、何度もアタックしてやっと通るものもあります。ただ、実際にGOを出すのは上層部の男性が主なのですが、ユーザー目線に近いのはやはり商品企画担当者なので、担当者が自信を持ってプレゼンしたものは、その感覚を信頼してもらえることが多いと思います。
――それで皆が「欲しい!」と思う製品が出てくるのですね。
山口 そうですね。特に私たちが言われるのが、「ただメイクアイテムを売っているわけではない」ということです。どういう意味かというと、ただ機能面を追求するというモノではなく、「メイクアイテムを使った時の喜び、楽しさ、トキメキ、ワクワク感、などの感情をお届けする」ということなんです。そういう、製品を通じて喜びを生むというような“イズム”を今まで受け継ぐことができているのかなと。

――皆が「可愛い!」と感じるパッケージや、使ってみて「コレいい!」と感じるアイテムが多い理由がわかりました。とはいえ、プチプラの価格帯で高品質なものを、これだけの数を作り続けるのは大変だと思うのですが、何か価格を抑える秘密があるのでしょうか?
山口 こちら皆さんによく聞かれる質問でして(笑)、化粧品の適正価格を追求して販売し続けたいという思いで頑張っているというのが実情です。誕生のきっかけ自体が「気軽に選べる価格帯のコスメを」ということもあり、その姿勢をできる限り守り続けたいという信念の元、作っています。利益重視だけではないというか。
――その思いだけで頑張っているのですね。大変な気もしますが……。
山口 確かに、最近では資材や原料のコストが高騰し、きつい状況ではあります。それでも品質にこだわりながら、少しでも手に取りやすい価格を実現させるブランドでありたいと思っています。例えばコストを抑えるための方法として、様々なロット数を上げて単価を落とす方法もありますが、そのためには数が出る、売れることが必須条件なので、ちゃんと売れる商品を頑張って作らなければならない。そのための仕組みを日々頑張って考え、実行しているという具合です。
――そうなると、ますます商品企画の方の責任、プレッシャーが大きくなりますね。
山口 はい。常にヒット商品を目指して試行錯誤しています。そのための特徴のひとつが、企画担当者が、商品名から容器、キャッチコピーまで、すべて自分たちで考えていることです。
――それは珍しいですね! プロのデザイナーやコピーライターなどに依頼するのではなく?
山口 プロの方に依頼もしますが、すべてこちらでディレクションさせていただき、ひとつの商品に関わることは、コスト交渉もふくめ、その担当者が一貫してひとりで行います。セクションが分かれていると、気持ちも離れてしまいがちになると思うのですが、一連の流れをひとりで担当することで、担当者の思いが強く乗った製品になっていると思います。
――では商品企画の方たちは、日々どんな風に製品のアイデアを得ているのでしょうか?
山口 今の情報収集の方法としては、SNSを外すわけにはいかないので、皆日々SNSは細かくチェックし、潜在的なニーズを探っています。どんなコスメが流行っているのか、メイクの悩みは何かなどを常にリサーチしていますね。自社製品への良い意見もマイナス意見も参考にして、既存の製品のリニューアルにつなげたりすることも多いです。
そもそも美容やコスメが大好きで入社している者ばかりなので、普段自分が毎朝メイクをしている中で感じているちょっとした不満や悩みなど、日常の中での気づきを大事にしています。日常生活の中でいきなりアイデアが降ってきて、実際に製品化したというものもありますね。
2025.07.24(木)
文=斎藤真知子
撮影=平松市聖