生理×気圧変化は最悪
生理があるがゆえに、生理期間に天気痛が重なると、体調は最悪に……。
「不調の要因が2つ重なるので、片頭痛や倦怠感がより強く出たり、寝込んでしまうほどの症状に見舞われたりする方も少なくありません。月経痛やPMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)の改善は天気痛外来だけでは難しく、私のところでは婦人科の先生と連携をとりながら対応をしています。
低用量ピルで月経にまつわる症状が軽減し、それに伴って寝込むほどの天気痛からも解放されたという方はたくさんいらっしゃいます」
天気痛外来を受診する女性に特徴的なのが、30~40代女性の約8割に片頭痛の症状があること。
「もともと頭痛持ちの女性は多いですが、気圧変化を脳に伝える前庭神経が頭痛を引き起こす三叉神経を刺激してしまうようなのです。頭痛のトリガーとなる強い光や大きな音の刺激と同じように、気圧の変化を感じたら片頭痛が起こるという直結ルートが存在するのだから厄介です。
さらに片頭痛は、頭痛と頭痛の間にある間欠期にもイライラや眠気、だるさ、集中力の低下などを感じやすく、日常生活への影響が大きいことも患者さんを苦しめる要因となっています」
低気圧が慢性痛を悪化させる
雨模様の日に頭痛や肩こり、腰痛がひどくなったり、古傷が痛んだりする人は多いが、佐藤先生の最新の研究により、そのメカニズムが少しずつ解明されてきている。
「マウスの実験で、低気圧が近づいた時に副腎皮質ホルモン、いわゆるストレスホルモンの数値がグッと上がることがわかってきました。ストレスホルモンは痛みの感受性を高めるので、腰痛、頭痛、古傷の痛みなどの慢性痛がある人が気圧変化というストレスを感じると、さらに強く痛みを感じてしまうのです。
健康なマウスではこのような現象は起きないので、慢性痛の人にとって気圧変化が痛みのスイッチをオンにしてしまう、ということが言えると思います」
その人の体質や慢性痛によって天気痛の症状は変わるため、常日頃から自覚しているウイークポイントをケアしておくことも天気痛の予防・改善に役立つという。
「天気痛にはいくつかタイプがあって、むくみなど水分バランスの悪さからめまいや片頭痛が出やすい人、自律神経の乱れからくるPMDDなどイライラや気分の落ち込みが激しい人、血流が悪く首こりや肩こりがあり、頭全体が痛む緊張型頭痛が起こりやすい人、多くの人が、この3つのタイプに当てはまります。
むくみタイプはスクワットなどで下半身を鍛える、自律神経タイプはウォーキングや入浴を習慣にする、血流タイプは肩まわりのストレッチを欠かさないなど、日常生活でできることから取り入れてみましょう」
気圧を調整してくれる耳栓も
◆天気痛耳栓®

佐藤先生が監修した気圧調整機能付きの耳栓。片頭痛などを起こりにくくしてくれる。気圧変化の大きい新幹線移動の時にも活躍。
パスカル・ユニバース
info310@pascal-univ.co.jp
2025.06.17(火)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。