おじさんが内に秘めた弱さ、かわいらしさを引き出す猫

「もともと、おじさんを描くのは好きなんです。おじさんのキャラクターって、頑固とか脂っぽいとか、ネガティブな属性が前に出がちですよね。それを、ギリギリ嫌悪感を抱かれない形に落とし込むのが楽しい。ねこおじも本質的にはおじさんなので、若い女性に抱っこされるとか、絵面として忌避感のあるシーンは避けています」

 そんな“クセつよ”おじさんも、猫と組み合わせればグッと飲み込みやすい味わいになる。

 もうひとりのおじさん=勤め先のコワモテ社長に偶然拾われたねこおじは、「プンちゃん」と名付けられ、一緒に暮らすことに。社長が出勤すると、勝手にテレビを見たり、パソコンから服を注文したりと、やりたい放題。そんな猫らしからぬ行動を知っても「プンちゃん、天才!」のひと言でスルーし、溺愛する社長もどうかしている。

「おじさんって、社会的権威とまでいかなくとも、強い、偉そうなイメージがありますよね。それが猫というかわいいものに翻弄され、否応なく愛情を注いでしまう様子を見たら、親しみが増すんじゃないかと。おじさん自身も、普段は虚勢を張っているけれど、猫になら自分の弱さや、ちょっと幼稚な部分も見せやすいのだと思います」

2024.06.08(土)
文=伊藤由起

CREA 2024年夏号
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この記事の掲載号

猫のいる毎日は。

CREA 2024年夏号

猫のいる毎日は。

定価950円

人生に大切なことを猫は全部知っています。過去や未来ではなく、いまを生きること。必要なときに食べ、好きなときに眠ること。人に気を使いすぎないこと――。そう、猫は最高! それにしても、私たちはなぜこんなにも、この不思議な生き物に魅了されてしまうのでしょうか。1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。