1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。
「CREA」2024年夏号の「猫のいる毎日は。」特集。その一部を抜粋し、掲載します。
CREA 2024年夏号
『猫のいる毎日は。』
定価980円
動物写真家の岩合光昭さんと作家の角田光代さんによる特別対談が実現。猫を表現するおふたりが、「猫の愛で方」を語り合います。
「猫好きの人は、どんな猫種であれ、どんな柄であれ、猫であるだけで好き」
「猫はとにかく美しい。飛び上がったときの筋肉、足の運び、目の動き……一つひとつが素晴らしい」──岩合光昭
「猫が好きな人ってどんな猫種でも柄でも猫であるだけで好き」──角田光代
岩合 角田さんはトトちゃんと出会うまで、猫とは全く縁がなかったんですよね。
角田 そうなんです。トトは、漫画家の西原理恵子さんのおうちで生まれたんですが、私の心の準備ができる前に、突然やってきた、というのが実感です。
岩合 そのあたりのいきさつは、本を読ませていただきました。
角田 ありがとうございます。私はトトが我が家にやって来るまで、猫の顔がみんな違うって知らなかったんです。犬は顔も大きさもそれぞれ違うけれど、猫はだいたい同じだろう、と。それが、女の子は女の子らしい顔をしているし、男の子は男の子らしい顔をしている。外で生きている猫は、ちゃんと外で生きている顔をしている。“世界の再認識”ぐらいの、大発見でした。猫がこんなに違うのなら、たとえばスズメならスズメにもそれぞれに違いがあって、一羽のスズメをずっと見ていれば、その違いがわかるんじゃないか、と思いました。
岩合 その通りだと思います。犬の違いがわかりやすいのは、ヒトの手が加えられている、ヒトがつくったものだからです。猫はつくれない。ヒトが変えようと思っても、大きさも変わらない。猫は“猫の大きさ”なんです。
角田 あぁ、なるほど。
岩合 犬と猫とではそもそものルーツから違うんですよね。犬は、主に狩猟用にその形を変えてきました。
角田 犬好きの人って、その犬種が好きな方が多いような気がします。トイプードルが好きな人はトイプードルの写真集が欲しい、みたいな。でも、猫好きの人は、どんな猫種であれ、どんな柄であれ、猫であるだけで好き、という。
岩合 僕は犬の写真も撮らせていただいていて、犬の写真展もやっているんですが、(写真展に)来られたお客さまは、「これ、うちと同じ犬種だけど目が違うんだよね」と。自分の犬にはすごく興味があるんですけど、よその犬にはあまり興味がない。
角田 自分の犬、が基準なんですね。
岩合 そうなんです。でも、猫(の写真展)だと「うちの○○ちゃんにそっくり」と。
角田 (笑)。もう、どの猫を見ても、わあぁっ! って思います。
2024.06.07(金)
文=吉田伸子
写真=榎本麻美