1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。
「CREA」2024年夏号の「猫のいる毎日は。」特集。その一部を抜粋し、掲載します。
CREA 2024年夏号
『猫のいる毎日は。』
定価980円
パンダに恋をし、写真集を出版した小澤千一朗さん、世界中のパンダに会いに旅に出る中川美帆さん、心の中にパンダを宿している中村莟玉さん。仕事も生活もパンダが中心の3人に、その魅力を語っていただきました。
パンダの魅力は「かわいい」の先にある
――パンダを好きになったきっかけを教えてください。
莟玉 もともとデフォルメされたパンダが好きだったのですが、友人から「リアルパンダを見に行こう」と誘われました。シャンシャンの公開が始まり、観覧抽選に友人が当選したのです。見に行くと、まんまるでふわふわなシャンシャンがポンと置かれたようにいて。その愛らしさと見ている人たちの熱量に「会えるアイドル」という感覚を得て、リアルなパンダにどハマりしていきました。
中川 私は物心がついた時からパンダが好きで。きっかけは覚えていませんが、初めて見たパンダは1980年に2カ月ほど福岡市動物園にいた2頭。大学進学を機に上京してからパンダを見に上野動物園へ通い始め、その後上海でパンダを見てから海外のパンダにも興味が。オーストラリアとカタールにいるパンダをまだ見てないので、いつか行きたいです。
小澤 僕は動画がきっかけ。当時、一番好きだったのは、アドベンチャーワールドにいた永浜(えいひん)がモート(掘)に落ちてスタッフが引き上げる動画。そのスタッフが偶然、後輩の妻で話を聞くと「落ちたら拗ねて絶対に上がってこないから、なんとかするぞ」と話していたらしく。それで「パンダって拗ねるんだ! カッコ悪い自分がイヤなんだ」と知りました。個性があると気づいてから、パンダをまじまじと見ていたらそれを実感しハマりました。
莟玉 パンダを好きになった人の共通点は「個」で見ていることだと思います。パンダというグループで見ているうちは「かわいい」で終わりがちですが、そこから踏み込むと個性に気づく。
――小澤さんは桜浜(おうひん)・桃浜(とうひん)、莟玉さんはシャンシャンが「推し」のパンダですよね。この3頭が中国へ行ったとき、気持ちをどう整理しましたか?
小澤 僕は桜桃(おうとう)〈桜浜・桃浜のこと〉が中国へ行くことにポジティブでした。絶対に良い母親になってかわいい子どもが生まれるだろうから「行ってこい!」と思ってた。一つ気がかりなのが、成都基地(成都ジャイアントパンダ繁育研究基地)から動物園へ行かされちゃうこと。そうなると交配相手がいないかもしれないので、できれば成都基地に残ってほしい。
莟玉 シャンシャンが母親になった姿と子どもも当然見たいのですが、あまり無理しないでほしい気持ちもあります。上野動物園の東園から西園に移動しただけで落ち着かない感じになりましたし、中国でも公開まで長い時間がかかりました。今は幸せそうだと動画を見てわかりますが、今後、繁殖のために、ほかの個体に会ったら、驚きそうな予感もします。
小澤 海浜(かいひん)もアドベンチャーワールドから中国に行って、しばらく向こうの竹を食べなかった。それこそ個性を見て、中国へ行かず残ったほうがいいパンダは残れればいいなと。
莟玉 中国がパンダを貸与しているので、戻ることはわかるのですが、パンダファーストになってほしいな。
――もし、パンダと話せるなら、どんなことを聞いてみたいですか?
莟玉 まずはシャンシャンを褒めてあげたい。大変なストレスに耐えたので。そしてらしさを失わず、中国で元気でいてくれてありがとうと伝えたい。
小澤 桜桃には「パンダケーキはおいしい?」と聞きたい。成都基地はそれが基準らしく、食べればひと安心。あと、桜浜と桃浜は互いに相手のことを覚えているか知りたい。パンダは忘れっぽいというけれどこの双子はシンパシーがあると思っているので。
2024.08.30(金)
文=中川美帆
写真=榎本麻美(パンダ)、松本輝一(人物)