ジャイアントパンダは同じように見えても、意外と千差万別で性格も異なります。東京・上野動物園で暮らすパンダの特徴や食べ物、飼育係の1日について、同園の冨田恭正副園長兼教育普及課長に伺いました。
『CREA』2024年夏号 のBook in book「偏愛パンダ図鑑」で紹介しきれなかった内容を中心にお伝えします。
上野動物園で暮らす親子4頭のジャイアントパンダの飼育係は8人。子どもが生まれた時など特別な日を除いた基本的な1日は、まず午前8時30分に出勤してミーティングを行い、前日からの引き継ぎ事項などを確認します。それからエサを準備して、公開の準備。開園は午前9時30分です(パンダの公開は午前10時からだが早まることもある)。
パンダが夜間に過ごした場所から出たら、そこを掃除します。夜間に過ごした場所とは、バックヤードと室内の公開エリア。夜間はこの両エリアをパンダが自由に行き来できるようにしています。職員が退勤して無人の間、基本的にパンダは屋外に出しません。
おおむね午前9時30分~午後3時30分の間は、エサの交換、掃除、パンダの行動の観察・記録などをします。夜間の録画映像も確認して記録します(参照:パンダ4頭分の行動を1分ごとに記録 シャオシャオの異変に気づいたのも飼育係の小さな疑問からだった)。日によっては、パンダにトレーニングをすることもあります。
公開が午後4時に終了したら(シャオシャオとレイレイの観覧受付は午後3時30分に締め切り、混雑状況によってはそれより早く締め切る)、夜間にパンダが食べるエサの準備や掃除などをして、日誌に記入。午後5時までに作業を終え、入浴してから退勤します。パンダに限らず、上野動物園の飼育係は基本的に衛生管理のため、飼育現場で作業した後は入浴(人によってはシャワーのみ)をしてから園を出ます。
ちなみに職員はパンダの体を洗いません。パンダは自ら水に浸かったり、背中を草に付けてこすったりしています。上野動物園で副園長兼教育普及課長を務める冨田恭正さんは「おそらく綺麗の概念が人間と違うのだと思います。寄生虫がいるかは分かりませんが、もしかしたらパンダにとっては寄生虫を落とすことが綺麗にすることかもしれません」と話します。
2024.06.22(土)
文・写真=中川美帆