●叩かれるシーンまで衝撃が再現される4Dにビックリ
海のシーンはスピルバーグも褒め称えたというくらい、VFXとは思えないほどリアル。 昔「タイタニック」を前の席で見て船酔いしたことを思い出した。良かった。後ろの席で本当に良かった。
風ブォッ、椅子ガクガク、スクリーンギャオース! ざっぷんどっぷん!
文章が擬音だらけになってしまったが、それほど感覚が忙しい。しかも衝撃の再現は飛行機や船、ゴジラによるものだけにあらず。神木隆之介演じる敷島が、青木崇高演じる橘宗作に叩かれるシーンまでパシッと風で衝撃が来てビックリ。そこまでする!? まさか私の人生、青木崇高さんに叩かれる疑似感覚が味わえる日が来るとは。
そして、ゴジラの大暴れとともに描かれる、戦争を「生き延びてしまった」という後悔、今度は役に立ちたいという願い。ほぼ笑わずそれを表現する神木隆之介を筆頭に、浜辺美波、安藤サクラ、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、山田裕貴がガツンガツンと名演技で、ゴジラという虚構の上にリアルな「戦後」を浮かび上がらせるすごさ。吉岡秀隆演じる野田健治による、作戦決行前の演説は深くしみいる。
ゴジラに立ち向かう人たちの知恵と苦悩、勇気と奮闘に泣いた。ゴジラで泣くとは全然想像していなかった。
ゴジラとはなんなのだろう。人間の悪意、戦争、沈めても沈めても息を吹き返してくる殺意の具現化なのか――。
2024.03.08(金)
文=田中 稲