超一流の歌手とピアニストによる実力派ユニット
寒さ厳しいこの季節、身も心も芯から温まりたいなら、男声ヴォーカルのホットで聖なる響きを楽しめるIL DEVU(イル・デーヴ)のデビュー・アルバム『DEBUT』はいかがかしら?
あるときは修道士のように、あるときは吟遊詩人のように、またあるときは昭和のエンターテイナーのように、ときを越えた遥かなる「男の詩情」を感じさせるこのアルバム、流行りもののポップスに飽きた人にぜひ聴いていただきたい、至福のハーモニー集なのです。
優しさと温かさに溢れた素晴らしい歌声を聴かせるこの5人組、今ホットに活躍する男性歌手4人(テノール2人、バリトン2人)と、凄腕ピアニストで構成されているユニットなのだけど、名前がとてもユーモラス。世界的にブレイクしたイケメン・ヴォーカル・グループ「IL DIVO」をもじって、メンバーの体格の良さをポップに表したもの。
しかし、音楽ライターとしてこれだけは伝えたい……それは、彼らイル・デーヴのほうがIL DIVOより歌が「ずっとうまい」ということなのです!
現役オペラ歌手として精力的に活動する望月哲也(テノール)、大槻孝志(テノール)、青山貴(バリトン)、山下浩司(バスバリトン)が、お互いの声に惚れて結成したイル・デーヴは、一人一人が日常的に「マイクなしで」長大な歌劇を暗譜で歌える超実力派集団。発声のスタイルも正統派で、それゆえにポップスのクロスオーヴァーとは異なる、高貴でハイカロリーな魅力が詰まっている。
主役級のソロ歌手として超多忙なメンバーのスケジュールを縫って、奇跡の虹のように実現してしまったのが、この貴重なユニットなのです。
彼らの人気のコンサートにも足を運んだことのある私だけど、イル・デーヴのパフォーマンスの魅力とは、豊かな響きを支える体格の素晴らしさもさることながら、その表現の稀に見る精神性の高さに尽きるわ。艶やかな美声には、宗教的でホーリーな深味があって、染み入るハーモニーに聴き入っていると、つい熱い涙が溢れているのです。
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2014.01.21(火)