飛びぬけてノーブルでエレガントなセンスに脱帽

IL DEVUのメンバーは、左から、望月哲也(テノール)、大槻孝志(テノール)、青山貴(バリトン)、山下浩司(バスバリトン)、河原忠之(ピアノ)。それぞれの体重は不明

 「僕たちはフトメン」とあえてちょっと自虐的(?)なユニット名をつけたのは、今やクラシックのアーティストはフレンドリーでなければ、コア・ファン以外に伝わりづらい時代だからなのかも。コンサートでは面白いMCもついて、楽屋にやきそば屋さんが登場したというエピソードも話してくれました(実際は、歌う前にはそんなに食べられないそうですが……)。

 本当に寛大でフレンドリーなエンターテイナーであるイル・デーヴだけど、彼らの中にあるものは飛びぬけてノーブルでエレガント。

 ヴェルディ・オペラの悲劇の主人公のような「誉れ」の感覚を持ちながら、やなせたかし作詞「ロマンチストの豚」を朗々と歌ってしまうセンスが心憎いわ。「朧月夜」「ダニー・ボーイ」「マイ・ウェイ」のようなポピュラーな曲も、本物の芸術家が取り組むとこんな聖歌のような響きになることに驚きよ。美空ひばりの名曲「川の流れのように」では、あっと驚くレインボーなコーラス・マジックも展開され、いくつもの魅惑をしかけてくる。聴けば聴くほど、意外なアイデアが満載なのです。

 ピアノ伴奏は、オペラの指揮も手掛ける声楽の名ピアニスト、河原忠之氏。日本の歌手なら誰でも河原先生の伴奏で歌いたい、と思うほどの偉大なアーティストでありながら、この先生もしっかりと「イル・デーヴ」のヴィジュアルに収まっているのも素晴らしい。

 イケメンのイル・ディーヴォにまったく劣ることのない「美声年」軍団イル・デーヴ。貴重なライヴでしか聴くことの出来なかったデーヴたちの魅力を、このCDで広めたいというのが私の2014年の目標のひとつでもあるのです。「人の声」という究極の楽器の響きに、ぜひ肉迫していただきたい!

IL DEVU 『DEBUT』
¥3150 発売中(日本コロムビア)
オフィシャルサイト  http://columbia.jp/ildevu/
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小田島久恵(おだしま ひさえ)
音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。

 

Column

小田島久恵のときめきクラシック道場

女性の美と知性を磨く秘儀のようなたしなみ……それはクラシック鑑賞! 音楽ライターの小田島久恵さんが、独自のミーハーな視点からクラシックの魅力を解説します。話題沸騰の公演、気になる旬の演奏家、そしてあの名曲の楽しみ方……。もう、ときめきが止まらない!

2014.01.21(火)