現場では即興的な感情の動きがそこにあるべきだと思う

――この映画について、石井監督や共演者の方々と話し合うことはありましたか? 主人公である昌平の妻・堂島洋子役の宮沢さんと夫婦としてどう演じるか、相談することもあったのでしょうか。

 あまりなかったと思います。

――それぞれに作り込んでくるかたちでしょうか。

 そうですね。そこは石井さんとの関係性もあると思いますが、多くを説明してもらわなくても石井さんが何をしたいのかを理解する努力も仕事なので。共演者の方とは、もともと僕は作品や芝居についてそんなにしゃべらないです。手の内を明かすようで、恥ずかしいんですよね。

――撮影現場での手ごたえを大切に調整していくのでしょうか。

 そうですね。(役者として演じる時は)あくまでも即興的な感情の動きがそこにあるべきだと思うんです。あんまり話し合ったりすることで余計な準備はしたくないなと思っています。

――反応を固定させず、生の感情を活かすためにあえて。宮沢さんとも、話をするよりも即興性を大切にされていたのでしょうか。

 どちらかというと僕が避けていたのかもしれません。宮沢さんは舞台もやられるから、話したいタイプかもしれないですけど、僕が逃げちゃうのかもしれないですね(苦笑)。今回の撮影では心配も多かったのか、リハが終わるたびに「今の大丈夫かな」と聞かれるんですけど、僕が言うべき言葉はなくて、「ぜんぜん大丈夫ですよ」と毎回答えていました。以前も共演していますし、信頼関係がもうありますからね。(そこで生まれる化学反応を)良くないと感じるわけがないんです。

2023.10.12(木)
文=あつた美希
写真=釜谷洋史