女性に突き刺さる、現代性という部分もあるのかもしれない
――堂島昌平というキャラクターを演じるなかで、意識したことや印象に残っていることはありますか。
大切なことは脚本に書かれているので、脚本からしっかりと読み取って演じるだけですね。思い出すのは、ちょうど撮影の時に紫外線アレルギーがピークだったんです。日に当たるところすべてが真っ赤に腫れ上がって、みんなドン引きしていました(苦笑)。メイクさんやスタイリストさんがずっと傘をさしてくれたり、一生懸命いろいろ対応してくれて。
しかもそのメイクさんとスタイリストさんは昔から仲が良いので、待ち時間に一緒に準備運動のストレッチをしていたら、僕だけぎっくり腰になってしまって……。その日から激痛との戦いで……。そういう意味ではすごく大変な現場だったかもしれません(笑)。
あとは、堂島昌平だけでなく、この4人(主要な登場人物)がみんな表現者だから、それぞれの気持ちが理解できたことは面白い経験でした。僕ももの作りに携わる人間として共感できる部分がたくさんありました。
――映画『月』では昌平を含む主要キャラクターは4人いて、“書けなくなった”元・有名作家である妻の洋子、彼女が勤める重度障害者施設の同僚であり作家志望の陽子、同じく同僚で絵が好きな青年さとくん、という設定ですね。また昌平のように妻を心から尊敬し応援している夫、というたたずまいには、現代的な夫婦関係が感じられました。
なるほど。監督からは、若い女性からの反応が大きいと聞いています。特に女性に突き刺さる、現代性という部分もあるのかもしれないですね。
――若い女性からの反応が大きいことは少し意外にも感じました。その反響の理由について、オダギリさんはなぜだと思われますか。
ある方は、出産なり妊娠なり女性特有の感覚を、日本映画でここまで真摯に向き合った作品は少ないんじゃないか、と話されていましたね。
石井さんの作品は、綺麗事だけではない、現実の生々しさを感じるような部分がしっかりと描かれているので、そういう部分を真っ直ぐに受け止めているのかもしれないですね。
2023.10.12(木)
文=あつた美希
写真=釜谷洋史