『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』は何でもありで自由な作品

 俳優・映画監督・ミュージシャン……。様々な表現形態を持ち、自分の“色”を披露してきたオダギリジョー。脚本・演出・編集・出演を手掛けるドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』の新作も控える彼が、次世代の監督・キャストたちと組んだ『ぜんぶ、ボクのせい』が8月11日(木)に劇場公開を迎える。

 不寛容な社会の表情を切り取り、鋭い批評性を持って見つめた本作で、オダギリが示したのは人間味。その温もりは、ユーモアをもってものづくりに向かう彼自身の姿勢にも通じる。“遊び”がなくなっていく社会で、どう遊んでいくのか――。オダギリジョーの創作論を前後篇に分けて掲載する。

【前篇からつづく】「希望は持っちゃいますね」 次世代の監督・共演者にオダギリジョーが今感じていること

――オダギリさんは直近だと『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』や『わたしは最悪。』といった海外の映画にコメントを寄せられていました。ここまでは国内の作品について縦軸で伺ってきましたが、横軸の海外の作品に関してはいかがですか?

 コロナ禍で海外に2年以上行けておらず、肌で感じる機会がないから世界の映画の温度をつかみ切れていないところはあります。でもそんな中で、是枝裕和監督はすごいとしか言いようがないですよね。作りたいものが枯れずにちゃんと毎回描きたいものが描けていて、かつカンヌでパルムドールを取るなんて本当にとんでもないことだと思います。

 パルムドールに満足する事なく、むしろ精力的にフランスや韓国で作品を作り、自分の世界を広げている。そもそも毎年毎年描きたいこと、やりたいことがあるってすごいと思いません? 自分だったら無理だな……。そんなに出てこないです。

――でもほら、シリーズ化した『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』があるじゃないですか。

 『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』は何でもありで自由な作品だから、今やりたいと思う事を入れまくってるんですよ。そうすると、これを作ってすぐ他の作品が書けるか? といったらやっぱりできないんですよね。ある程度『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』に詰め込んだので、次に新しいものを書こうと思っても何を書けばいいんだろう? という気持ちになってしまう。

 そういう意味で、是枝さんや阪本順治さん、石井裕也さんなどはコンスタントにオリジナル脚本を書いているからすごい。しかも年単位で、ほぼ毎年撮っていますよね。準備があって、現場が終わって、仕上げをやって、完成させるのに1年近くかかるのが普通なのに……、いつ本を書いてるんだ! って思いません? あの方々の表現欲の深さはちょっと理解を超えています。

2022.08.10(水)
文=SYO
撮影=平松市聖
ヘアメイク=砂原由弥
スタイリスト=西村哲也