ワガママにものを作る人がやっぱり必要

――ただ、僕自身がかつてオダギリさんのアルバム『WHITE』『BLACK』を通して「これがノイズミュージックか!」と知ったように、オダギリさんの表現を通して何かに出会えた人もたくさんいると思います。

 え? それはヤバいですね……。そう考えると、表現ってちゃんと責任を持たなきゃいけないですよね(笑)。

 でもだからこそ、ワガママにものを作る人がやっぱり必要だと思うんです。さっきSYOさんがおっしゃっていたような観客に合わせたものづくりって、やっぱり長続きしない。ニーズに合わせたとして、その作品がウケるのはきっと今だけだと思います。もっと先の日本映画を考えられるような、本当にクリエイティビティを大切にした作品をもっとワガママに作っていい。

――そこでスタイルジャムの話に戻ってくるというか(笑)。例えば『パビリオン山椒魚』なんて、初めて観た学生のときは「山椒魚を抱いてレントゲンを撮る」という画が全く理解できなかったんです。でも同時に「自分はいますごいものを観ている」という感覚があって、しかもそれが15年以上経っても自分の体内に残っている。それだけ作品の寿命が長かったということなんですよね。

 すごく好きな映画プロデューサーの方がいるのですが、その人に言われたのは「誰か世の中に一人でもその作品を観て人生が変わるような体験をしてくれれば、それで幸せだ」ということ。自分もそういう志で作品を作りたいという想いは、いまも持ち続けています。

 おっしゃっていただいた音楽に対するノイズの面白さであったり、人生に少しは影響を残せたのであればあのアルバムも意味があっただろうし、山椒魚の画が残っているのであればあの映画が作られた意義もある。そういう作品であふれてほしいですけどね。ビジネスだけじゃなく、発見や刺激なども映画を観ることの醍醐味ですからね。早送りで観たりすることって、どんどんそういう経験から離れているような気がします。脳に残らないじゃないですか。それがもったいないということに気づいてもらえればうれしいです。

» 【前篇から読む】「希望は持っちゃいますね」次世代の監督・共演者にオダギリジョーが今感じていること

オダギリジョー

俳優。1976年2月16日生まれ。岡山県出身。『アカルイミライ』(’03年)で映画初主演を飾り、以降第一線で活躍を続ける。初長編監督作『ある船頭の話』はヴェネチア国際映画祭他で、高い評価を得る。近年の主な出演作は映画『アジアの天使』、『大怪獣のあとしまつ』、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』など。2021年にはNHK連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』で脚本、演出、編集、出演を手がけた。2022年には続編が放送される。

『ぜんぶ、ボクのせい』

2022年8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

白鳥晴都 川島鈴遥
松本まりか 若葉竜也 仲野太賀 片岡礼子 木竜麻生 駿河太郎/オダギリジョー

【STAFF】
監督・脚本:松本優作
エンディング・テーマ:大滝詠一「夢で逢えたら」(NIAGARA RECORDS)
製作・プロデューサー:甲斐真樹 製作:藤本款 定井勇二 前信介 鈴木仁 水戸部晃
アソシエイトプロデューサー:永井拓郎
ラインプロデューサー:中島裕作
撮影:今井孝博(JSC)
照明:金子康博
録音:髙田伸也
美術:仲前智治
衣裳:篠塚奈美 馬場恭子 ヘアメイク:山井優
音楽プロデューサー:田井モトヨシ 編集:田巻源太
助監督:野本史生 制作担当:中村哲也
スチール:久保田智
製作:スタイルジャム、クロックワークス、ビターズ・エンド、グラスゴー15、ミッドシップ、コンテンツ・ポテンシャル
制作プロダクション:スタイルジャム 宣伝:ミラクルヴォイス 配給:ビターズ・エンド
2022/121分/カラー/日本/5.1ch/ビスタ  PG12
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化
振興会
©2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会
■公式サイト:https://bitters.co.jp/bokunosei/

2022.08.10(水)
文=SYO
撮影=平松市聖
ヘアメイク=砂原由弥
スタイリスト=西村哲也