ムロツヨシの足跡から辿る“ムロ式表現論”

 俳優であり、演出家として多様な表現を行い続けるムロツヨシ。彼の最新主演映画『神は見返りを求める』が、2022年6月24日(金)から劇場公開を迎える。

 本作でムロが演じたのは、なかなかブレイクのきっかけをつかめない底辺YouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきの)をサポートするイベント会社社員の田母神。「神様」と呼ばれるほどの献身的な性格でゆりちゃんをサポートするが、思っていなかった形で彼女は人気YouTuberの仲間入り。両者の関係がこじれていく。

 『ヒメアノ~ル』でもムロと組んだ𠮷田恵輔監督らしい、コメディ→サスペンスへと転換していく切れ味の鋭さが特徴的な快作だ。同時に、本作のテーマのひとつであり、今や他人事とはいえない「承認欲求」は、観る者個人とシンクロし、ヒリヒリとさせられるはず。

 CREA WEBでは、長い下積み時代を経験したムロツヨシの足跡と、彼の表現論にフォーカス。俳優を目指した19歳から46歳の現在に至るまで、そしてパンデミックの時代で次世代に期待すること――。充実のロングインタビューは、未来への糧となることだろう。

 前篇では、もがき続けた10代から20代の雌伏の時期を振り返っていただいた。

【後篇に続く】「ゆりちゃんの承認欲求、わかる」ムロツヨシ “おじさんの表現者論”と次世代の表現者に残したいもの

――今回は「ムロツヨシさん×表現」を中心にお聞かせください。19歳で深津絵里さんと段田安則さんが共演した舞台『陽だまりの樹』を観たことがきっかけとなり、俳優を志されたと伺いました。

 はい。趣味から派生したわけでもなく、「ご飯を食べていけるようになりたい」という“仕事”“職業”として役者を選択しました。

 大学に入ってすぐに、「やりたいことがない」自分に気が付き、やりたいことを探そうとしてすぐに出会ったのがお芝居。子どものころから確かにテレビで流れているドラマや映画をよく見ていたし、お笑いも好きでしたが「自分がお笑いをやっている姿」は想像できなかった。逆に言うと、お芝居をやることに対しては自分の中で違和感がなかった。そこから始まりました。

2022.06.23(木)
文=SYO
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=池田真希
スタイリスト=森川雅代